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週刊現代 不正・事件・犯罪

佐藤優が死刑確定間近との噂の木嶋佳苗にリンゴを差し入れした理由

ノンフィクション・ノベルを味わう

佳苗の見た夢

4月14日、最高裁判所第2小法廷は、首都圏連続不審死事件の被告人、土井(旧姓木嶋)佳苗(42歳)被告の上告に対して、被告の上告を棄却した。被告はこの決定に異議を申し立てているが、最高裁がこの異議を却下することは確実なので、1・2審での死刑判決が確定することになる。

木嶋被告は、刑の早期執行を望んでいるということだ。そのような場合、法務省が早い時期に死刑を執行することがある。

筆者は鈴木宗男事件に連座し、東京地方検察庁特別捜査部に逮捕され、東京拘置所の独房に'02年5月14日から'03年10月8日までの512日間勾留された。勾留期間の後半、両隣の独房には確定死刑囚が収容されていた(そのうちの1人は連合赤軍事件の坂口弘氏だった)。

自分は、いずれ塀の外に出ることができるが、両隣の人たちが外に出るのは、死刑が執行されるか、病死するか、いずれにせよ死体になった後だ。そう考えると、何とも表現しがたい感情に襲われた。

 

こんな経験をしているので、犯罪の態様にかかわらず、筆者は死刑囚に対して特別の思いがある。

木嶋被告の死刑確定が近いという話を聞いて、取材で彼女に面会する週刊誌の編集者に、1万円分の花とリンゴの差し入れを頼んだ。拘置所では、被収容者が購入できる果物が限られている。筆者が勾留されていたときリンゴは購入できなかった。それだから、リンゴが差し入れられることは、塀の外に被収容者のことを想っている人がいるということを意味する。

しばらくして東京拘置所に収容されている木嶋被告から人づてに「佐藤さんのリンゴについて考えながら眠りについたので、『ヘントの祭壇画』(15世紀にベルギーで描かれた絵画)の夢を見た」というメッセージが届けられた。

この木嶋佳苗被告をモデルにした柚木麻子氏の小説『BUTTER』が抜群に面白い。出たばかりの小説であるが、殺人事件を扱ったノンフィクション・ノベルの名著として歴史に名を残すことは間違いない。

もっとも実際の事件では、練炭によって殺人が行われたことが話題になったが、作品では、睡眠薬の過剰摂取、風呂場での溺死、電車への飛び込みとなっている。木嶋被告は北海道の出身だが、主人公の梶井真奈子(カジマナ)は新潟出身となっている。

小説の中での事件は以下のように描かれている。

〈梶井真奈子は一九八○年東京都府中市生まれ、のちに父親が故郷で祖父の不動産業を手伝うことになり、新潟県安田町に移り住む。母親はフラワーアレンジメント講師。七歳年下の妹と比較的裕福に育つ。高校卒業と同時に大学入学のために上京するも、三ヶ月で中退。以来、愛人業を生業として、裕福な初老の男たちによる不思議なネットワークに守られて、定職に就くことなく品川区不動前を拠点に生活してきた。