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政治政策 週刊現代
東京大洪水、国債暴落が「単なるお話」で済ませられない小説が出た
『日本国債』から17年

日本初の女性総理大臣の誕生を描いた『スケープゴード』の続編『大暴落 ガラ』。実際に起こり得る「災害」と「経済リスク」に荒れる永田町をリアルに描き、話題をよんでいる。著者、幸田真音さんに作品に込めた思いなどを聞いた。

引き金は荒川の大洪水

―日本初の女性総理・三崎皓子の組閣人事から、この政治経済小説は始まります。

主人公の皓子が初めて登場したのは、『スケープゴート』。政界は女性の活躍が遅れており、政治家や官僚の方々からは、「日本で女性総理はまず無理」と断言されてきました。ならば小説で誕生させてみよう、と。

大学教授の皓子が民間人として金融担当大臣に登用され、与野党の対立の中で「当て馬」として総理になる話を書きました。この作品がテレビドラマ化された際、「総理として活躍する姿も見たい」とリクエストされ、「お任せください」と約束して書いたのが本作なのです。

―皓子が組閣を行うタイミングで、荒川上流の秩父地方に局所的な集中豪雨の予報が出され、内閣の船出に大洪水が襲いかかります。

災害に対する備えについて、読者の方と問題意識を共有したいという思いがありました。近年は自然災害が過激化し、大規模な被害をもたらすようになっています。実際に、'15年には鬼怒川が決壊した大水害がありましたよね。同様のことが、東京が下流域にある荒川で起きたら……。

東京は、地下鉄網や地下街が高度に発達した過密都市です。荒川水害の可能性について調査、取材をしてみると、仮に北千住近辺で堤防が決壊した場合、水はストローの中を進むように地下鉄網を猛スピードで流れ、目黒あたりまで被害が一気に広がる可能性があることがわかりました。

現場の河川事務所が懸命に対応しているから、平安に感じられることでしょう。でも、作中のような災害はいつ起きてもおかしくないんです。それに、都心のインフラは'60年代に整備されたものが多く、老朽化していることも危険性を増大させています。

 

―そして、この大洪水を引き金として、国債、円、株が大暴落の兆候を見せる。複数の危機が同時に押し寄せます。

私は'00年に、国債市場の暴落を描いた『日本国債』を書きました。これはセンセーショナルな内容だと国内外から注目していただき、もう17年も経過するのにいまだに反響があるんです。そしていま、日本の累積債務残高は増加する一方です。

国の借金の残高は当時400兆円でしたが、現在は1000兆円を超え、2・5倍に膨らんでいます。これは、子や孫の世代が得られるはずの税収を先遣いしているということなんです。

しかし現在、新発国債のほぼすべてを日銀が買い支えているため、危機的状況は国民に見えにくくなっています。つまり、日銀は金融市場にとって「スーパー堤防」のような存在になっている。一般の人が「決壊」の脅威を感じられないほどに危機が取り繕われ、隠されてしまっています。

財政や国債の問題に警鐘を鳴らすことは、私のライフワークでもあります。災害の問題と一緒に、多くの読者の方に知ってほしいと考えました。