企業・経営 経済・財政

ビールにガソリン…政府主導の「値上げ強制」にイオンが反旗!

官民「物価戦争」のゆくえ
加谷 珪一 プロフィール

官主導の値上げ強制

イオンは、顧客が求める商品を顧客に代わって調達し、安く提供することを「小売店の使命」と位置付けており、今回の値下げには社会的意義があることを強調している。

冒頭にも述べたように、岡田氏は政府の脱デフレ政策を痛烈に批判するとともに、「これまでの3年は、政府からの値上げ圧力に屈してしまった」と発言するなど、今後は政策の方向性にかかわらず価格を追求する方針を明確にしている。

もともとイオンは「流通革命」を強く掲げてきた企業だけに、岡田氏のスタンスにそれほどの違和感はない。だが、ここまで政府を批判することについては少々ワケがあると考えた方がよさそうだ。

おそらくそれは、官主導の半ば強制的な値上げが水面下で進んでおり、これがさらなる消費の停滞をもたらす可能性があることと深く関係している。

Photo by GettyImages

官主導による値上げ強制の代表例はビールである。

一部の読者の方はすで気付いているかもしれないが、このところビールの店頭価格が急激に上昇している。

ビール業界は、大手5社の出荷量が前年割れするなど不振が続いており、本来なら値下げしてでも販売数量を稼ぎたいところだ。そのような中で、まったく逆の動きになっているのは、政府が価格規制を強化しているからである。

昨年5月、「酒税法」と「酒類業組合法」が改正されたが、これはビールの安値販売を事実上、禁止するための措置と考えてよい。

 

酒類販売の業界には、メーカー側が小売店に対して「リベート」と呼ばれる多額の販売奨励金を支払う慣行があり、これが安値販売の原資となっていた。

ところが改正法では安値販売そのものが事実上禁止されたほか、リベートの支払いについても基準が厳格化されることになった。適用になるのは今年の6月からだが、メーカー側は適用後を見越してリベートの条件を厳しくしている。

このため小売店は大胆な安値販売ができず、店頭価格が上昇しているのだ。

今回の法改正は、小規模な酒屋などが強く実現を求めてきたとされる。確かにそのような政治的側面があるのかもしれないが、背後では政府の意向が強く働いているとみた方が自然である。