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極めて不自由な文在寅・韓国大統領が本領発揮するために必要なこと
何をするにも妥協を強いられる…?
木村 幹 プロフィール

なぜ「雇用創出」を打ち出したのか

新政権の自由を阻むのは国会だけではない。

例えば、内政について見てみよう。周知のように韓国では国民の間で経済的格差が拡大しており、深刻な問題となっている。通常であればここから考えられる、典型的な進歩派の政策はセーフティーネットになる社会福祉予算の拡大である。

例えば今回の大統領選挙において、共に民主党の予備選挙候補者であった李在明城南市長は、「最低所得補償制度」の導入を主張しており、韓国社会の一部でその要求が高まっていることは明らかである。

しかしながら、当選した文在寅はこのような政策を主張しなかった。大統領選挙において文在寅が繰り返した経済政策は「雇用創出」。一見すると、公共事業拡大による雇用拡大を主張する典型的な保守派の政策のようである。

進歩派であるはずの文在寅がこのような主張を行ったのには理由がある。1997年に深刻な通貨危機を経験した韓国では、財政赤字の拡大が再び通貨危機をもたらすことへの恐怖が強く存在する。事実、選挙戦で6回に行われた候補者間討論においても、各候補が掲げる経済政策は必要な財源の観点から大きく批判されることとなった。

だからこそ財政赤字拡大への懸念が強く存在する韓国では、進歩派政権であっても、福祉拡大以上に、経済活性化に伴う雇用拡大を主張する必要がある。

 

事実、大統領選挙当日に行われた出口調査においても、韓国有権者の53%以上が新政府が取り組むべき最優先課題として「経済活性化」を選んだのに対し、同じ調査で「福祉拡大」を選んだのは僅か9%にしか過ぎなかった。

それは彼らが自ら望むと望まざるとにかかわらず、「経済活性化」に取り組まなければならないことを意味している。

もちろん、自由にならないのは外交も同じである。朴槿惠政権下における活発な独自外交は、結局政権終盤になり米中両国の不興を買うことになった。

その象徴がTHAADミサイル防衛網配備を巡る両国の対立であり、米中両国は共に自らの主張を韓国新政権に認めさせるべく、強い圧力をかけている。

日本との関係は2015年末に慰安婦問題について合意に達したものの、ソウル・釜山の両都市における在外公館前の少女像設置問題を巡って円滑とは言い難い状況にある。アメリカの強い圧力にもかかわらず、北朝鮮は核とミサイルの開発を止める気配すら見せておらず、朝鮮半島は依然強い緊張状態に置かれている。