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極めて不自由な文在寅・韓国大統領が本領発揮するために必要なこと
何をするにも妥協を強いられる…?
木村 幹 プロフィール

何をするにも妥協を余儀なくされる

実際、文在寅はこの国民の党への対策を既に着実に打っている。彼が大統領就任直後に発表した国務総理指名者である李洛淵は現・全羅南道知事で、元大統領であった金大中の流れを引く人物である。

他方、国民の党所属の国会議員、とりわけその中核を占める地方区選出議員の多くは、この全羅道の選挙区選出であり、また金大中との因縁を有している人物も多い。

また、彼らが担いだ安哲秀は今回の大統領選挙において、全羅道地域で文在寅にダブルスコアでの惨敗を喫しており、このままであれば彼ら、国民の党所属の全羅道選出議員たちの苦戦は明らかである。

このような状況下において、彼らが現職の全羅南道知事であり、金大中との関係も深い李洛淵に対して反対票を投じるのは、極めてハードルが高い。

とはいえ、このようなやり方により問題が解決できるのは、野党側から獲得すべき支持数が国民の党の議席数より少ない31議席に過ぎないからである。

 

ここで厄介なのは、2012年5月に制定された改正国会法、通称「国会先進化法」の存在である。当時の激しい与野党対立が国会での議論停滞を招いた反省から作られたこの法律では、「与野党間で意見の食い違いがある法案を本会議に上程する場合、在籍議員5分の3以上が賛成しなければならない」と定めている。

つまり、閣僚任命と異なり、法案制定においては、全国会議員300人のうち、180人以上の賛成がなければ、その審議にすら入れない、というルールを韓国国会は有しているのである。

当然のことながらこの法律の存在は120議席しか有さない共に民主党に大きな障害となって表れる。つまり彼らは新たな法案を議論する度に、60人以上の他党議員の賛同を得なければならないのである。

既に述べたように、共に民主党の左右に位置する正義党と国民の党が有するのはそれぞれ6議席と40議席、これらに加えて14人の国会議員の支持がなければ、文在寅政権は事実上、何もできない状況なのである。

それは言い換えるなら、この政権が実は自由韓国党と正しい政党という、保守政党との妥協をも模索しなければならないことを意味している。即ち、少なくとも現状において、文在寅政権の支持基盤が極めて脆弱であり、彼らが自らの望む政策を自由に実行できる状態にはない。

国会での過半数を持たない彼らは、一つ一つの政策についていちいち野党の同意を得る必要があり、そこで提示される政策は当然、彼ら本来の「進歩派」色を薄めて妥協的なものとなることを余儀なくされる。

さらに悪いことに、保守政党、とりわけ旧朴槿惠与党直系と言って良い自由韓国党は、その候補者であった洪準杓が選挙戦において、文在寅を「従北勢力」という用語を使って激しく批判するなど、新大統領への対決姿勢を強めている。

このような状況において敵対する保守勢力からの支持をも取り付けて、自らの望む政策を行うことは控えめに言っても容易ではない。

ちなみに次回国会議員選挙は3年後。国会解散の権限を持たない新大統領は任期の過半以上をこの状況で過ごさざるを得ないのである。