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マツコ・デラックスを現代の「最強神」と呼ぶべき、深淵なる理由

祭礼と女装の歴史にみる「双性原理」

子孫繁栄・五穀豊穣に女装が関わるワケ

4月2日、神奈川県川崎市の金山神社(川崎区大師河原・若宮八幡宮境内)の例祭「かなまら祭」がにぎやかに催され、男根をかたどった3基の神輿が京浜急行川崎大師駅前や参道の商店街を練り歩いた。

川崎市「かなまら祭」の「エリザベート神輿」photo by Junko Mitsuhashi

かなまら祭は大都市部に残る数少ない性神祭祀だが、性神を祀り子孫繁栄と五穀豊穣を願う祭はかつては全国各地で行われていた。

こうした祭礼に登場する男根は、注連縄(しめなわ)が張られているようにご神体である。金山神社でも神輿行列の前に宮司さんが「御魂(みたま)入れ」の儀式を、終わると「御魂抜き」の儀式をちゃんとやっている。単なるオブジェではない。

女性器オブジェがわいせつであると摘発されたとき(「ろくでなし子裁判」)、被告を支援するフェミニストが「なぜペニス型は良くて、ヴァギナ型はわいせつとされるのか?」と引き合いに出していたが、同レベルで扱われるものではない。ちなみに、日本には女陰型のご神体もたくさんある。

いきなり話がズレてしまった。かなまら祭で興味深いのは、いちばん目立つショッキング・ピンクの巨大男根型神輿を担いでいるのが、女装した男性であることだ。東京浅草橋にある老舗の女装クラブ「エリザベス会館」(1979年開店)のメンバーで、1980年代からもう30年以上続いていて、すっかり地元に馴染んでいる。

なぜ、子孫繁栄・五穀豊穣を願う祭に女装者が関わるのだろうか? 実は祭礼に女装が伴う例は、あちこちに見られる。

たとえば、毎年4月15日に行われる山梨県甲斐市竜王の三社神社の祭礼「おみゆきさん」。祭場である釜無川(かまなしがわ)の信玄堤(しんげんつつみ)には大勢の赤い着物を着た人が集まっている。遠目に見ると女性かなと思うが、近寄ってみると赤い着物を着て女装した男性たちだ。

山梨県甲斐市「おみゆきさん」photo by Junko Mitsuhashi

この格好で重い神輿を担ぎ、堤防の上で、掛け声とともに揃って片足を交互に上げる所作をする。つまり、神の助けを得て、堤を踏み固めることで堤防を丈夫にして水害を防ぎ、五穀の豊穣を願う祭りなのだ。

けっこう体力がいる祭りだと思うが、問題はなぜわざわざ女装するのか?

神輿を担いでいる女装の男性に聞くと「昔からそうしている」という答えが返ってきた。行事(進行係)の方にうかがうと「祭礼に参加している三社の内の一宮(甲府市の浅間〔せんげん〕神社)の祭神(木花開耶姫命〔このはなさくやひめ〕)が女性だから」という返事。さらに「なぜ女神だと女装するのですか?」と突っ込むと「そうだね。よくわからないね」。

どうも女装する理由は、祭礼の参加者にもよくわかないようだ。

もうひとつ例をあげよう。毎年7月14日に神奈川県横浜市戸塚区の八坂神社で行われる「お札撒き」という行事。

横浜市戸塚区「お札撒き」photo by Junko Mitsuhashi

神社の境内で赤い着物に浅葱(あさぎ)色の襷、白塗り化粧の男性が輪になって「天王様は泣く子が嫌い……」と唄いながら踊っている。中央のリーダーだけが日本髪の鬘を被り、他の14人は手拭を姐さんかぶりにしている。

歌い終わると「ここらでまこうか」の声とともに、リーダーが腰の袋からお札を出して高く掲げる。すると他のメンバーが集まり寄って団扇で扇ぐ。

お札は小さく薄いので、たちまち宙に舞う。夕空に舞った五色のお札がチラチラと落ちてくる様は美しい。しかし、見惚れていてはいけない。輪を囲んでいた大勢の見物人がそれを争うように拾い取るからだ。キャッチできるかなと思ったら、おばさんのお尻ではじかれてしまい掴み損ねた。

やっとゲットしたお札は横9.9cm(3寸)、縦2.5cm(8分)で「正一位八坂神社御守護」と記されている。

「お札撒き」で撒かれるお札 photo by Junko Mitsuhashi

さっきはじかれたおばさんに「なんでこんなに頑張って拾うんですか?」と聞いてみた。すると「このお札、台所に貼っておくと効くのよ。神社で神主さんからもらうお札より効果があるの」と言う。

次に、世話役さんに聞いてみた。「なんで女装してお札を撒くのですか?」。例によって「昔から、そうしている」という返事。説明によると、戸塚のお札撒きは江戸時代中期の元禄年間(1688~1704)に始まったという。もう300年以上、続いていることになるが、やはり女装する理由はもうわからないようだ。

さて、祭礼を行っている人でも女装する理由がわからないとなれば、自分で考えるしかない。お祭りの儀礼というものは、なんだかよくわからないことをしているように見えても、多くの場合、目的がちゃんとある。

「お札撒き」はわかりやすい。おばさんが言っていた通り、女装の人が撒いた方がお札に効力(パワー)が乗るからだ。「おみゆきさん」も、女装して神輿を担いだ方が(女装しないより)堤防がより丈夫に固まるからだろう(あくまでもイメージとしてだが)。

つまり、女装してやった方が効力がある、女装した方が祭礼の目的にかなう(合目的的)ということだと思う。