オリンピック
東京パラリンピックを大成功させるには、この「奇跡」に学べ
乙武洋匡がロンドン取材!

開催を3年後に控え、徐々に盛り上がりを増す東京五輪。ベストセラー『五体不満足』の著者でコメンテーター・スポーツライターとしても活躍する乙武洋匡氏は、東京パラリンピックをよりよいものにするためのアイデアを求めて、前々大会の開催地ロンドンに飛んだ。

実は、2012年・ロンドン五輪は、パラリンピック関係者の間では、「大会のチケットを完売させた、奇跡の大会」と呼ばれているのだ。

自身も元パラリンピック選手であり、現在はイギリス上院議員で、ロンドン大会でパラリンピック統合ディレクターを務めたクリス・ホームズ氏にインタビューを行なった。チケット完売という奇跡を達成できた秘密とは?

史上初のチケット完売

乙武 ロンドン五輪からはや5年が経ちましたが、いまだイギリスの人々の心の中には、当時の記憶が鮮明に残っていることと思います。自転車競技のクリス・ホイ選手が2つの金メダルを獲得するなど、イギリスの選手の活躍は日本でも大きく取り上げられました。

一方で、ロンドン五輪は「史上最もパラリンピックが盛り上がった大会」として評価されているのですが、あまり日本にはそこのことが伝えられていません。

今日はその経験について伺いたく、こちらにお邪魔しました。今振り返ってみて、やはりあのパラリンピックは「成功だった」と思われますか?

 

ホームズ はい。ロンドン五輪は成功であったと思いますし、私の人生のなかで最も誇りに感じているものです。私たちは、パラリンピックのあり方自体を大きく変えることができたと自負しています。

ご承知のように、ロンドンパラリンピックは、史上初めてチケットを完売させた大会なんです。それだけでなく、オリンピックの協賛企業全てが、パラリンピックにも協賛した初めての大会でもありましたし、また、世界の各メディアが本腰で報道してくれた大会でもあります。

クリス・ホームズ氏

乙武 パラリンピックを成功に導くために、何を一番大切にしていましたか?

ホームズ 一番大切にしていたことは、ビジョンを明確にすることと、チームの一人一人にそのビジョンを理解してもらうことでした。

ビジョンとは、ごく端的に言うと「人々とパラリンピックを繋げること」でした。「競技としてのパラリンピックを、価値のあるものとして人々に見てもらう」ことが必要でした。その中で「今回のパラリンピックでは、チケットの完売を目指そう」という目標を設定しました。

しかし、これがなかなか難しかったのです。中でも苦労したのは、他のディレクターたちを説得させることでした。多くの人から「チケットを完売させるなんて無理だ」と言われ続けた中、それが可能だと信じてもらうのはとても大変でした。

乙武 日本でも、何か新しい目標を立てたり、新しいチャレンジをしようとすると、必ず保守的な人がそれにストップをかけたりしますが、イギリスでも同じことが起こるんですね。なぜ、ホームズさんは、チケットを全て売るといった、これまでの大会が成し遂げられなかったことに対して「できる」と確信を持てたのですか?

ホームズ それは、パラリンピックが多くの可能性を秘めていることを知っていたからです。たとえば、多くの人は障害者とどこかで接点を持ちたいと思っているのですが、なかなか機会がない。

そのなかで、障害者スポーツは、両者を繋げる非常に良い機会だと思っていました。しかし、過去の大会では、十分にその機会を活かせていなかったのです。