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日本メディアが見誤る韓国・文在寅新政権の「本音」
緊迫の東アジア情勢をどう乗り切るのか
近藤 大介 プロフィール

「七放世代」とは、恋愛、結婚、出産、マイホーム、人間関係、夢、就職の7つを放棄した若者たちを指す。

少し前までは「38度線」という言葉が流行していた。これは38歳で会社からリストラされるという意味だ。だが今や、そもそも、若者が就職すること自体が困難な時代になっているのである。

例えば、私もソウルへ行って驚いたのだが、韓国の名のある大学を出たばかりの若者がファミリーマートでアルバイトをしていた。聞くと、100社以上もの就職試験を受けたものの、1社からも声がかからなかったという。その若者は自嘲的に語った。

「僕のライバルは、中国から来ている留学生ですよ。僕より安い時給でコンビニバイトをしようとしますから」

 

こうした若者たちが朴槿恵前大統領に怒りの矛先を向け、デモを起こし、引き倒したのである。

〔PHOTO〕gettyimages

南北関係にも確固としたパイプ

文在寅新政権の外交に関しても日本メディアは悲観的な見方を報じている。だが私は、そうは思わない。

まず北朝鮮に対してだが、李明博政権と朴槿恵政権は、平壌とのパイプがほぼ皆無だった。それに対して、文在寅政権には確固としたパイプがある。

一例を示せば、国家情報院の院長に徐勲を内定させた。徐勲は2000年と2007年に行われた南北首脳会談の影の立役者である。かつては「金正日に会った回数が一番多い韓国人」との異名をとった。2008年に公職を退いたが、今回再び大抜擢を受けた。

一方の北朝鮮も、4月11日に開催した最高人民会議で外交委員会を復活させ、李善権を委員に据えた。李善権はやはり北朝鮮において「青瓦台を最もよく知る朝鮮人」との異名をとるキーパーソンである。もちろん徐勲との一定の信頼関係も築いてきた。

今後の南北関係はこの徐勲=李善権ラインを中心にして進められていくだろう。

実際、早くも今月14日に南北の初接触が行われた。北京で開催した「一帯一路国際フォーラム」で、韓国与党「共に民主党」の朴炳錫議員と北朝鮮代表の金英才対外経財相が会場内の控え室で短時間、言葉を交わしたのである。

会話の内容はつまびらかにされていないが、こんな話だった可能性がある。

北朝鮮側: 「本日のミサイル発射は南を標的をしたものではなく、中国を威嚇するためだ」

韓国側: 「わかっている。文在寅政権は過去2代の政権とは違って、北側を敵視するものではない。われわれは同胞だ」

文在寅大統領の両親は北朝鮮の日本海側に位置する咸鏡市の出身であるが、朝鮮戦争が勃発したことで韓国側に逃げてきたのである。そうしたこともあって、文在寅大統領の北朝鮮に対する意識はあくまでも「同胞」であって敵ではない。