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日本メディアが見誤る韓国・文在寅新政権の「本音」
緊迫の東アジア情勢をどう乗り切るのか
近藤 大介 プロフィール

そんな習近平主席が、今年一番の外交イベントと位置付けて開催したのが、「一帯一路国際フォーラム」だった。

5月14日の午前中、習近平主席は世界中から集まった首脳らを前に40分におよぶ大演説をぶった。それは一言で言えば、「これからは中国が中心になってアジアの平和と安定そして発展を進めていく」という宣言だった。

〔PHOTO〕gettyimages

そのような 習近平主席の一世一代の「アジア盟主宣言」に合わせて、その面目を丸潰しにすべく、北朝鮮は中距離弾道ミサイルを発射したのである。

今回「火星12」の飛距離は787km、これはまさに平壌から北京までの距離に等しい。しかも前回のミサイル、今回のミサイルともに、やや北側を向けて飛行している。

これまでのミサイルは、中国に気兼ねして、決して北方に向かっては撃たなかった。それを今回は「場合によっては北京も標的にするぞ」と脅しつけたのである。だから習近平主席の晴れ舞台に合わせ、敢えて北京を直撃する距離に着弾させたのである。

 

韓国の新大統領はどんな人物か

さて、就任早々、このような物騒な目にあってしまったのが韓国の文在寅新大統領である。

5月9日に行われた大統領選挙で文在寅候補は、1342万3800票(41.08%)を獲得し圧勝した。5000万韓国国民は半年間の政治ブランクを経て、この左派の新たなリーダーに国を託したのである。

まだ就任したばかりだというのに、日本ではこの新大統領の評判がすこぶる悪い。2015年末の日韓慰安婦合意をご破算にするとか、核ミサイル開発に邁進する金正恩委員長と握手するとか、さまざまな非難・批判が報道されている。また日本にとって、過去最悪とも言えた盧武鉉政権の再来だという声も上がっている。

だが、私は文在寅新大統領をかなり常識的かつ賢明で、話のわかる人物であると見ている。それは5月10日に行われた大統領就任演説にも表れている。

私は1989年の盧泰愚大統領以降すべての大統領の就任演説を聞いてきたが、先週の文大統領の演説は過去の歴代大統領と比較しても非常にまともなのである。「まとも」というのは、韓国の政治家にありがちな力説調でもなく、また理想主義的でもなく、身の丈にあったことだけを淡々と述べているからである。

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まず、「今回の選挙では、勝者も敗者もいません」として国民和解を訴えた。そして、「大統領から見本を示します。まず権威的な大統領文化を清算します」として何よりも自らの襟を正すことを宣言した。

「大統領の帝王的権力を最大限分かち合います。低い姿勢で働きます。国民と目線を合わせる大統領になります」とも述べている。

「私に対する支持の有無と関係なく、有能な人材は三顧の礼で迎えます」と言い切った大統領も、私の知る限り初めてである。

そして最後の方ではこう述べている。

「きれいな大統領になります。手ぶらで就任して手ぶらで退任する大統領になります。後日、故郷に戻って平凡な市民になって隣人と情を交わすことができる大統領になります」