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日本メディアが見誤る韓国・文在寅新政権の「本音」

緊迫の東アジア情勢をどう乗り切るのか

5月14日午前5時28分ごろ、北朝鮮がまた中距離弾道ミサイルを発射した。今回は平壌から遠くない亀城市近郊から東北東方向に向けて発射した。今年に入って10発目、昨年から数えると実に33発目のミサイル実験となる。

5月15日付の朝鮮労働党機関紙『労働新聞』は、1面から3面まで36枚の写真を使って大々的に実験成功をアピールした。労働新聞によれば、発射されたのは「火星12」というミサイルで、2111.5km上昇したあと、787km先の目標水域に正確に着弾した。

視察に訪れた金正恩委員長は発射成功に歓喜し、「核開発もよりいっそう急げ!」と命じたという。

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復活する「北朝鮮生贄論」

この新型ミサイル発射は、後述する韓国の文在寅政権に対する牽制だった、という見方を日本メディアは伝えている。だが、私はそうは思わない。今回のミサイルは主に中国の習近平政権に対する牽制であった、というのが私の推論である。

中国と北朝鮮は、朝鮮戦争(1950~53年)を共に戦った血盟関係にあり、1961年には軍事同盟を結んでいる。現在でも北朝鮮の貿易の9割を中国が占めるなど、事実上の「後見国」となっている。

1949年秋に国交を樹立した両国がこれまでに最も関係を悪化させたのは、1992年8月に中国が韓国と国交を正常化したときだった。この正常化の1ヵ月前、当時の銭其琛外相が平壌を訪れ、金日成主席に翌月の中韓国交正常化を告げた。そのときに銭外相が受けた冷遇については銭外相の回顧録『外交十記』に詳しい。ちなみに銭元外相は先週、89歳で逝去した。

おそらく、その銭元外相も、1992年よりも中朝関係が悪化する時期が来ようとは予想だにしなかったに違いない。

現在の中朝関係は明らかに25年前の域を超えている。中国国内においては「北朝鮮生贄論」が公然と語られているほどだ。これはトランプ政権と組んで金正恩委員長を排除しようということだ。そうしてアメリカに貸しを作ることで南シナ海におけるアメリカの牽制を避けようというものである。

実際、4月6日、7日にフロリダ州のトランプ大統領の別荘で開かれた初の米中首脳会談の席で、トランプ大統領は習近平主席にこう持ちかけている。

 

「エスカレートしていく北朝鮮の核とミサイル開発を中国に何とかして欲しい。そのためには、たとえ中国軍を北朝鮮に入れたとしても甘受する。また、北朝鮮に対して本気で圧力を掛けてくれるのならば、南シナ海に関しては目を瞑る」

当の習近平主席自身も予想だにしなかったトランプ大統領の発言だった。このとき以降、中南海で北朝鮮生贄論が息を吹き返してきたのである。

中南海で「北朝鮮生贄論」が登場したのは昨年1月6日に北朝鮮が4度目の核実験を強行した際だった。だが、翌2月7日に韓国政府がTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)の配備を検討すると発表したことで「北朝鮮生贄論」は雲散霧消してしまった。それが今、約1年を経て再び議論されているのである。

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個人的な見解を述べれば、もし本当に米中がタッグを組んで金正恩委員長の排除に乗り出すとしても、それは今年後半に開かれる第19回中国共産党大会を経てからであろう。

習近平主席が尊敬する毛沢東は、1949年に建国して権力を完全掌握し、その翌年に朝鮮戦争に参戦した。続く鄧小平も、1978年に権力を完全掌握し、その翌年にベトナムに侵攻した。そうした過去の例を鑑みれば、もっともリスクが高いのは「来年」であって、今年ではない。

そんな習近平主席が、今年一番の外交イベントと位置付けて開催したのが、「一帯一路国際フォーラム」だった。

5月14日の午前中、習近平主席は世界中から集まった首脳らを前に40分におよぶ大演説をぶった。それは一言で言えば、「これからは中国が中心になってアジアの平和と安定そして発展を進めていく」という宣言だった。

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そのような 習近平主席の一世一代の「アジア盟主宣言」に合わせて、その面目を丸潰しにすべく、北朝鮮は中距離弾道ミサイルを発射したのである。

今回「火星12」の飛距離は787km、これはまさに平壌から北京までの距離に等しい。しかも前回のミサイル、今回のミサイルともに、やや北側を向けて飛行している。

これまでのミサイルは、中国に気兼ねして、決して北方に向かっては撃たなかった。それを今回は「場合によっては北京も標的にするぞ」と脅しつけたのである。だから習近平主席の晴れ舞台に合わせ、敢えて北京を直撃する距離に着弾させたのである。

 
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