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東電提案「事故処理プラン」が相変わらず夢物語のオンパレードすぎる
いつまで現実から目を背けるのか

嘘に嘘を塗り重ねる

このままでは、福島第一原発事故は、事故の深刻さよりも、事故処理の拙さで歴史に記録されることになるだろう。

政府と国営・東京電力は二人三脚で、また事故の処理費用を過少に見積ったうえで、その大半を東京電力の稼ぎで賄えるかのように脚色して、事態の深刻さを覆い隠す挙に出た。

先週木曜日(5月11日)、東電が政府に申請した新々・総合特別事業計画がそれで、事故処理費用として「50兆~70兆円は必要」という民間シンクタンクの試算を無視して、経済産業省の22兆円で充足できるという前提に立ち、うち16兆円を東電の稼ぎと東電の再上場を前提にした政府保有株の売り出しで賄うというのである。

具体策も、国策支援を受けている国営東電が民間企業との市場競争力を強化するとか、他企業と資本・業務提携関係を築くとか、再稼働のメドが立たない原発を稼働させるといった夢物語のオンパレードだ。

計画は全国の電気料金をこれまでより押し上げるだろうが、遠からず破たんして、もう一段の国民負担を強いることが確実な内容である。

福島原発事故から6年以上が経っても、官邸が責任逃れと失敗隠しをやめない経済産業省を中心にした虚構の事故処理計画を容認し続けることは、政府のガバナンス不在を裏付けるもので、国民の信認を揺るがしかねない深刻な問題だ。

福島第一原発Photo by GettyImages

国民の電気代を使う予定です

国営化後の東電の事業計画は、2012年5月の総合特別事業計画と2014年1月の新・総合特別事業計画に次いで、今回が3つ目となる。ずるずると事故処理費用が膨らみ、過少見積りのせいで足りなくなるたびに改定してきた経緯があり、今回は事故処理費用の総額が前回の2倍の22兆円に拡大した。

内訳は、福島第一原発の廃炉が8兆円、被災者への賠償が8兆円、汚染した土壌や物質の除染と中間貯蔵が6兆円となっている。

このうち廃炉の全額と賠償のほぼ半分を東電の稼ぎから捻出、除染・廃炉費用のうちの4兆円を政府(原子力損害賠償・廃炉等支援機構、以下「原賠機構」)が保有する東電株を将来売却してその利益で賄う計画だ。

残りは、国が税金で除染・中間貯蔵のうちの2兆円を、各地の大手電力会社が賠償のうちの4兆円を、そして電力自由化で参入した新電力各社が賠償のうちの0.24兆円を負担するという。東電と電気の供給契約を結んでいない家庭や事業所も、税金や電力料金として原発事故の処理費用を負担する仕組みになっているわけだ。

 

出て来るのは夢物語ばかり

ちなみに、22兆円という事故処理費用の総額は、経済産業省の東京電力改革・1F問題員会(東電委員会)が昨年暮れに示した試算で、東電はこれを踏襲した。

以前にも本コラム(2017年3月14日付『原発廃炉に70兆円必要!? 保守系調査機関が算出した驚くべき数字』)で紹介したが、政府の試算は、廃炉や除染、中間貯蔵、汚染水処理などの見積もりが甘く、老舗で保守的なシンクタンクである日本経済研究センターでさえ50兆円から70兆円に達しても不思議はないと疑問を呈している。

一般の上場企業なら経営計画を作る場合、自前で試算をやり直すのが当たり前のところだ。が、東電は国営企業だ。支配権を持つ筆頭株主である政府に逆らえず、近い将来、さらに膨らむのが確実な事故処理費用を、政府試算の通り少なめに仮定して、今回の計画を作ったのである。