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企業・経営
トヨタの「寂しき決算」が示した、日本企業がまもなく直面する危機
「追い風」頼みもここまでか

トヨタをはじめ、わが国の大手自動車メーカーを取り巻く経営環境は徐々に変化している。

円安という追い風がやみ、企業の実力が問われる状況が出現しつつある。業績が頭打ちになる企業も出ており、経営者は先行きへの慎重な見方を強めているようだ。

各企業はコスト削減や事業構造の見直しなどを進め、環境の変化に対応できる体制を整えようとしている。

一方、世界の主要株式市場を見ると、楽観論が増えている。

フランス大統領選挙が最終的に波乱のない結果となったこともあり、先進国、新興国とも株式市場は史上最高値圏で推移している。アナリストらの間では、国内企業の業績は想定内との見方が多い。少なくとも悲観的な見方はきわめて少ない。

このように、企業と金融市場の認識にはかなりのギャップがある。

「追い風参考記録」

2016年5月11日、トヨタ自動車の豊田章男社長は印象深い言葉を残した。それが、「過去数年間の業績は、為替による追い風参考記録」だった。

豊田章男〔PHOTO〕gettyimages

2012年11月以降、為替相場では円売りが進み、積極的な金融緩和策を重視した安倍政権の発足も加わって円安の流れは加速した。これに支えられて、わが国の大手企業を中心に、輸出収益や資産評価額のかさ上げが業績を拡大させた。

好業績は企業の自助努力だけによるものではない。100メートル競技の走者が追い風に押されて自己最高のタイム出すが如く、円安によってもたらされた。

その結果、“官製春闘”での賃上げも進んだ。わが国の経済全体が、円安による追い風参考記録の中にあったのである。追い風参考記録とは、わが国経済全体のあり方を示す的確な表現だったといえる。

 

それから一年がたった5月10日、トヨタ自動車は2016年度の決算を発表した。

社長自ら“等身大”と評した決算は、各国の通貨安やコストの増加に押されて5期ぶりの減益だった。今後の見通しに関しても慎重であり、2018年3月期決算で純利益は前期比18%減、販売台数は横ばいと想定されている。

この業績と見通しに対して、多くの株式アナリストが“想定内”との見方を示している。

トヨタ自動車の財務力が安定していることや、世界的に自動車販売台数が高水準を維持していることもあり、同社の株主還元意欲は堅調だ。

そのため、当面の業績は大きく悪化せず、自助努力で今後も成長と株主への価値還元が続くとの楽観的な見方がほとんどだ。