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英語の話せるイチローは、なぜ一流の通訳を雇うのか
日本人メジャーリーガーの「英語事情」
長谷川 滋利 プロフィール

和製野球英語はメジャーで大ウケ

実際にメジャーの現場での、英語の話をしましょう。

通訳は、昔は球団が手配してくれることが多かったですね。僕がエンゼルスに入団する時は、球団の求人に応募してきた方でした。彼はOKな人物でしたけど、僕はなるべく自分でコミュニケーションを取りたかったので、最低限のことだけお願いしていた記憶があります。最近の選手は、自分が気心知れた通訳スタッフを連れてくるケースや、エージェントが探してきた人物を球団が雇う、という契約がほとんですね。

あとはどうしても野球英語の壁はあります。例えば、僕はそれなりに英語を喋れるようになりましたが、それでも今、医療の現場に行って通訳やってくれ、と言われたら絶対にできません。いくら流暢な語学力があってもその基礎知識や専門用語を知らないと仕事にならないですね。

グラウンドに出るとけっこうな頻度で「野球英語」に出会います。日本でフライなどを捕る際の掛け声「オーライ」の「I got it」は有名ですが、選手によっては「Mine!」、つまり、俺のボールだ、と主張したりしますね。あとはボールが飛んできた時の「気をつけろ」は「Heads up」を使います。「Watch out」でも間違いではないですが、グラウンドではあんまり聞きませんでした。

球拾いの「Shag」「Shagging」なんかは野球以外ではあんまり使わない単語です。これらはメジャーに来ないと知らなかったでしょうね。

反対に和製野球英語なんかはメジャーリーガーに面白がられました。

 

デッドボールと言えば日本では死球ですが、アメリカではフィールド上で完全に止まった球を指します。ボールがバッターに当たる死球は正しくは「Hit by pitch」ですね。日本ではデッドボールって呼ぶんだ、と同僚に言うとみんな「嘘だろ、そんな物騒な」とか笑ってましたね。このあたりは日本人メジャーリーガーの“あるある”かもしれません。

語学力もその表現方法も選手それぞれですね。僕なんかは、失敗しつつも臆さずに喋っていくタイプだったから、入団当時はチームメイトにフロントの偉い人の前に連れていかれて「おいシギ、さっき教えたの言ってみろ」とかよく遊ばれてましたね。

もちろん「ああ、これは目上の人に言うたらアカンやつやな」という雰囲気は分かってましたけど、そこはしっかり言って笑いをとって、ノリというか「喋られへんけど、なんとか喋ってんねん」というキャラクターで許してもらっていた部分があります。褒められたやり方ではないかもしれませんけど、選手ともスタッフともそういうくだらないことで関係を築けて良かったなと今は思っています。