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英語の話せるイチローは、なぜ一流の通訳を雇うのか
日本人メジャーリーガーの「英語事情」

メジャーリーグの現場に挑む日本人選手は、通訳、勉強法、コミュニケーションに対してどんな準備をして渡航するのでしょうか。元メジャーリーガーの長谷川滋利さんが明かします。

「フィールド・オブ・ドリームス」が僕の先生

僕は学生時代から「いつかはアメリカに行きたいな」と思ってましたから、割と英語の勉強はしてきた方だと思っています。文法もしっかり学びましたし、テストの点も悪くなかった。でも、大学2年生の時、全日本の遠征でバンクーバーに渡航した際、リスニングもスピーキングも通用せずに、まったくコミュニケーションを取れなかった。ちょっと落ち込んだのを覚えていますね。

逆に「俺、英語なんて喋られへん」と言っていた面白い先輩が、ブロークンイングリッシュで現地の子供から笑いを取ってたりして「英語って勉強しなくても気持ち次第で何とかなるんやな」と気づいたのもその時です。

大学4年の時にもシアトルに行きましたし、新婚旅行もアメリカに行ったんですが、その時も共通して実感したのは、授業や教科書と、自分で使う英語は全然、違うなということです。

例えば「元気?調子どう?」みたいな挨拶「How are you doing?」は皆さんご存知でしょうし、文法的に正しい文です。授業や講義ではネイティヴの先生も分かりやすくゆっくり発音してくれるから、スムーズに返事ができると思います。

 

でもそれがアメリカでの日常会話になると「How ya doing?」と短縮されてしまいます。「How are you?」も「How are ya?」ほとんど「ハワヤ」と聞こえることもあります。wannaやgonnaもそうですね。さらにアメリカは人種の坩堝ですから、メキシカンやドミニカン、プエルトリカンのクセのある英語も混ざってくる。そこで学校の勉強だけで活きた英語を身につけるのは難易度が少し高いかもしれません。

だから僕はオリックス時代、映画「フィールド・オブ・ドリームス」を録音して、当時、発売されていたスクリプト(台本、脚本)を読みながら、移動の新幹線などで聞いてました。

映画の表現には、熟語も流行りも組み込まれています。作中に「分かった」という返事というか、相槌というか「I figured it out」というセリフがあります。これなんてスラングではないですけど、口語的ですよね。日本語でも「私はその件について了解いたしました」なんて会話で言う人はいません。教科書には出にくい、使える英語がたくさんあって、楽しく勉強できました。

今はほとんどのDVDでクローズドキャプションの機能がついていますので、既に観たお気に入りの映画を、英語音声と英語字幕でまた観るなんていうのもかなり身になる勉強方法ですよね。あとは音楽から入るのも一つのアイデアでしょう。メジャーリーガーの中には家庭教師をつける選手もいたようですが、どこかで遊びの要素を入れないと語学は続かないというのが僕の持論です。