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ライフ アメリカ 英語

ネイティブには意味不明…街で見かける奇妙な英語表現の数々

それでも英語を使いたい!

京都で見つけたシンプル・イングリッシュ

4月14日、午後1時過ぎ、快晴の空に京都タワーを見上げるタクシー乗り場で、僕たち4人は列にならんで順番を待っていた。

昨年のちょうどいま頃、桜に雨の日の午後、Foreign Friendly Taxi と書かれた看板が、ガードレールにくくりつけてあるのを、僕たちは見た。

その看板はそのままおなじ場所にあった。より目立つ場所に、より大きく、Friendly Taxis For Foreign Tourists と書かれたポスターがあるのを、僕たちは見た。

この英文の下に添えてあったひと言は、戦後の日本における英語教育の成果そのものだった。We speak simple English. という見事なひと言だったから。

Simple English とはどのようなものなのかについて、タクシーを待ちながら僕たちは話をした。

 

「イエス、イエス、アイ・アンダスタンド」は誰もが使う必須用語だろう、と僕たちの意見は一致した。「パードン?」も欠かせない、とひとりが言った。「ノー・バーゲン」もきっとあるだろう。値引交渉不可、という意味だ。

「1台に4人まで、荷物はトランクに」というひと言をシンプル・イングリッシュでなんと言うのか。指を4本立てて突き出し、Four, luggage, trunk.と、車体の後部を示す。「うしろの席に3人は無理よ」と、女性のひとりが言った。僕たち4人のうち、ふたりが女性だった。

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スマート珈琲店の2階でやや遅い昼食のあと、僕たちは錦市場へいった。買うものがあったからだ。

富小路を下がって錦に入るとほんの数メートルで買いたいものの店があり、そこでそれぞれが購入したあと、柳馬場で錦を出て四条へと下がろうとした僕たちが柳馬場から出ていく寸前、前方に中年女性の叫ぶ声を聞いた。

No hands!とその声は叫んだのだ。日本の人たちがたとえば東急ハンズと言うときのあのハンズではなく、日本の英会話勉強世界で言うところの、ネイティヴ発音のhands だった。aの音が見事なまでにその音になっていた。

錦市場は外国からの観光客で埋まっていた。陳列してある商品に手を出す外国からの観光客たちに対して、店番の中年の日本女性は、No hands!と叫ぶのだった。「さわるな!」と彼女は英語で叫ぶのだ。英語の音にしないとまったく通じない現場という日々の切実さのなかで、体の反応として身につけた hands の a の音だ。

柳馬場を四条に向けて下がりながら、やれば出来るじゃないか、と僕たちは感銘を新たにした。Please don’t touch.という店頭の表示はいまでも使われている。しかしそれは、錦市場のなかでは、現場で鍛えられた結果として、正しい音声をともなった上での、No hands!となった。

これは明らかに進化だ。