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直径65mmの巨大脳腫瘍を緊急摘出!お妻様「5年生存率8%」に
されど愛しきお妻様【8】
鈴木 大介 プロフィール

1日でも長生きしてほしくて

今思えば、お妻様にとって最もストレスがない生活とは、「好きな時間に起きて好きな時間に寝る」なのだが、とにかく毎回の血液検査の数値に一喜一憂してしまう僕は、健康情報を見ればどこにでも書いてある「午前中の日の光を浴びる」=太陽信仰みたいなものを、お妻様に押し付けた。お妻様に1日でも長生きしてほしいという思いがさせたこととはいえ、完全に僕は喪失の恐怖にとらわれ、暴走していたのだと思う。

 

お妻様はと言えば、見事なまでに、変わらなかった。面倒くさい僕との生活の中でご立派に育てあげた圧倒的スルー力で、小うるさい管理魔の僕をのらりくらりと巧みに交わし、愛想のかけらもない地域の猫に滅茶滅茶しつこく話しかけるという謎ロジックで篭絡しては、我が家に招きまくる日々。

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お約束の酷いネーミングセンスは脳みそに直径65ミリの大穴が空いているくせに健在で、「くさいちゃん、汚いちゃん、ひゃんちゃん、眉毛、にゃん王、ビビり玉、うなしー、エレノアさん、大白、中白、小白、汚れちゃん、錆ぃさん、おばやん、ラテ男ちゃん、しっぽさん、ロングしっぽさん、しっぽぼーん」と、えーと、あと誰がいましたっけお妻様?

「パンティちゃんな。最近あの子来ないなあ」

とまあ、思い出すだけでうんざりする命名をなさっている。

僕が手汗びっちょりかくほどに緊張して聞く毎回のMRI検査後の問診時にもお妻様はシレッとしたもので、主治医からも「お妻様は、その突き抜けた性格だからいいんだと思います」(うまく闘病できています)と太鼓判。結局毎月1回の抗がん剤治療を2年間クリアし、2017年初春をもって、5年存命率8%の中にも滑り込んだのであった。

が、残念ながら、そこまで僕の身体がもたなかった。2015年5月末、僕は脳梗塞を発症し、緊急入院することになってしまったのだった。

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