企業・経営 週刊現代
巨象「三菱重工」が東芝みたいになってきた〜1年で営業利益が半分に
問題は飛ばないジェット機以外にも
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長く三菱重工をウォッチしているアナリストはここ数年、事業説明会に登場する各事業部門トップたちの姿を見て、違和感を覚え始めたと言う。

「社長の無理難題に現場担当者も頑張ってこたえようとしているけれど、なかなかうまくいかない……そんな本音が隠し切れない場面が目立つようになってきた。

いまの三菱重工は、売り上げや受注というボリュームを取りに行くトップダウンに対して、現場が疲弊している。

一旦、無理な数値目標を取り下げて、態勢を立て直すべきでしょうが、宮永社長に改革の手を緩める気配はなく、この5月には新たな人事施策を発表する予定。東芝のように、プレッシャーを感じた現場が『数字のお化粧』に走らないかという危惧すら感じるようになってきた」

巨象の内側から沸き起こり始めたこうした異変が、経営をむしばみ出しているのだ。
追い打ちをかけるように、新たな巨大リスクも急浮上してきた。電機業界に精通するコンサルタントが指摘する。

「三菱重工は'14年に日立製作所と火力発電事業を統合したのですが、その統合前に日立が獲得していた南アフリカの不採算案件について、約7600億円を支払うよう請求しています。

日立側は『法的根拠がない』と突っぱねており、両社の交渉は長期化が必至。三菱重工は約3800億円分の請求権の一部をすでに資産計上しており、仮にとりっぱぐれれば、その分を損失計上しなければいけない可能性がある」

前述したように三菱重工の営業利益は1500億円なので、それが一気に吹き飛ぶインパクトだ。

さらにMRJをめぐっても、追加損失リスクが出てきた。ジャーナリストの松木悠氏が言う。

「MRJの主な販売先であるアメリカでは、スコープクローズという機体への制限条項があります。MRJはこの規制が緩和されることを見越した米航空会社から多く受注しているが、いまだその規制緩和が実行されていない。このままではMRJの88席クラスがアメリカで運航できず、最悪の場合は大量キャンセルのリスクも出てくる」

東京三菱UFJ銀行Photo by GettyImages

メインバンクの本音

それだけではない。三菱重工は、「フランスの原発大手アレバグループに追加出資する見込みだが、アレバは赤字体質で、将来的にも欧米で原発需要が伸びる見込みは薄い。他事業のリスクがあるところ、さらに原発リスクを抱え込むのは危険と言わざるを得ない」(龍谷大学の大島堅一教授)。

最終損益ベースでは三菱重工はすでに赤字に転落している中、こうした「爆弾」が火を噴けば新たな日本経済のリスクになりかねない。果たして、大丈夫なのか――。

三菱重工社外取締役で、メインバンクの三菱東京UFJ銀行元頭取の畔柳信雄氏は次のように答えた。

「(懸案は)ひとつひとつ片づけてきていますから、率直に言ってそれほど心配はしておりません。MRJはもともと息の長い仕事ということで、みんな覚悟をして取り組んでいる。(資金繰りに関しても)きちっと押さえるところは押さえた経営をしています」

しかし、この「楽観論」を鵜呑みにしてもいいものか。というのも、三菱UFJフィナンシャル・グループは三菱重工の大株主だが、2月末までにその保有株数を大きく減らしている。

「同グループが3月に関東財務局に提出した資料によれば、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行などグループ数社の保有株数は全体の8.58%だった。それが、直近では7.29%にまで急減。単純計算で4000万株以上も減らしている」(前出・アナリスト)

実は資金繰りをめぐっても、三菱重工はこの3月末に横浜・みなとみらい地区に所有していた巨大不動産を売却。すでに損失穴埋めなど財務基盤の強化に走り、昨年にはグループ内の不動産事業を分社化して、JR西日本にその株式も970億円で売却している。

「三菱重工には売却できる資産もあり財務的な余力はあるが、問題は本業の稼ぐ力が低下している可能性があること。難易度の高い大型プロジェクトが増える中、プロジェクト・マネジメント力がそれに対応しきれていない面がある。同社にとっては、ここ1年が収益力改善に向けての正念場となるでしょう」(S&Pグローバル主席アナリストの柴田宏樹氏)

持てる資産を吐き出し、分社化した事業を売却する……その姿は、あの東芝がたどった道にそのまま重なってきたように映るのである。

 

「週刊現代」2017年5月20日号より