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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

定年で「天下り」してきた医者は信用しても大丈夫なのか?

「経歴」と「肩書」は立派だけど…

大学病院にも「天下り」はある

「東京の有名大学病院の部長を務めていたと聞いて、とても期待していたのですが、実際はちょっとイヤな感じの先生でした。

ろくに診察しないうちにたくさんの薬を処方してきたので、こちらが質問すると『私の出す薬が信用できないんですか』と厳しい口調でまくし立てられました。しまいには『セカンドオピニオンもひとつの手ですよ』と、よそへ行けと言わんばかりなんです」

こう嘆くのは茨城県の病院に通院する高岡和子さん(68歳・仮名)だ。

経歴と肩書のある医者は信用できる――。そんな期待を、高岡さんはモロに打ち砕かれてしまった。

医師のほとんどは、定年を迎えた後も引き続き働くことを望むという。有名大学病院から、系列の大学病院や地方の総合病院へ籍を移すのは珍しいことではない。だが、その理由は人によって様々だ。

実は、大学病院にも、公務員でいう「天下り」や、サラリーマンの「出向」に近い制度がある。

須磨スクエアクリニック院長の須磨久善氏は次のように語る。

「大学病院は抱えている関連病院があって、持ちつ持たれつの関係があります。関連病院を手放さないようにするために、大学病院は自分のところの医者を傘下の病院に部長として送り込むこともあります」

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国内最高峰の学閥である東大病院には、虎の門病院や三井記念病院といった有名な系列病院があり、優秀な医者や主要なポストに就く人間はそちらに転籍することがある。

もちろん地方にも多くの系列を傘下に置いていて、県によっては地元の医大よりも多くの系列病院があるともいわれている。

そしてこれは東大に限った話ではない。たとえば慶応大には首都圏を中心とする「慶応関連病院会」が存在する。そのなかには東京医療センターや東京都済生会中央病院など、著名な病院があり、トップは慶大医学部出身者で占められている。

群雄割拠のマス取りゲームと化している大学病院の構造は、そこで働く医者にとってなにを意味するのか。

「優秀でないと病院からみなされたり、院内政治に敗れてしまった医者は、比較的小さな、地方の関連病院へ勤務させられることもあります」(麻酔科医の筒井冨美氏)

大学病院でポストを争ってきた医者にとって、関連病院への転籍は「敗北」を意味する。その結果、新天地でまったくやる気をなくしてしまう医者もいるという。

「東京では『やり手』と言われていた先生が、大学の教授選に負けて地方の大学に転籍になりました。その途端、彼はまったく仕事をしない『お荷物医者』になってしまったそうです」(前出・筒井氏)

つまり、大きな病院での勤務経験があり、関連病院でそれなりのポストを与えられているからといって、信じるに足りる医者とは限らないということだ。

もちろん、定年を迎えている、もしくはある程度のベテランで系列病院にやってきた人のなかにも、腕のいい医者はいる。

前出・須磨氏は次のように語る。

「系列病院のなかには、専門領域を強化したいと考え、非常勤講師として有名病院からその道のエキスパートを呼んでいる場合もあります」

先入観やニセ情報による「誤解」を持ったままでは、本当にいい治療は受けられないのだ。

「週刊現代」2017年5月20日号より