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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

「医者選び」の超難問~若さを取るか、経験を取るか、そこが問題だ

いったい何を基準にするべきか

どちらも一長一短ある

何年も大学病院に居座っていたり、次のポストが空くまでの腰掛けで患者を診たりするベテラン先生は信用できない。

それよりも、最新の医学知識を持ち、積極的にこちらのことを考えてくれる熱意にあふれた若い医者の診察を受けたい、と考える人も多いだろうが、これが誤解のもとになりかねない。

「私が国家試験を受けたときは、設問が260問でしたが、いまは500問。客観的にみれば、若い医者のほうが圧倒的に医学知識を持っていると言えます」(昭和大学横浜市北部病院の南淵明宏氏)

 

だが、だからといって若い医師のほうがいい治療ができるとは限らない。

新宿ミネルバクリニック院長の仲田洋美氏は次のように指摘する。

「いくら新しい知識があっても、五感を使って目の前にいる患者をよく見なければ、判断ミスにつながります。特に若手医師は、CTや検査の結果に気を取られすぎる場合が多いです」

研修医や医局に所属したばかりの若手医師は、経験不足から診断を誤るケースがある。神奈川県内に病院を開く40代の医師は、まさしく仲田氏が指摘したようなミスを研修医が犯すのを目の当たりにしたという。

「私が以前在籍していた病院で当直をしていたとき、右頬が大きく腫れた患者が救急車で運ばれてきました。担当になったのは3年目の研修医です。

血圧が低めということでCTを撮りましたが異常はなかった。点滴を打ったら血圧も戻ったことから、研修医は『熱中症だ』と判断しました。

ところが不安になって私がもう一度患者を検査してみると、深刻な虫歯が原因で下顎骨の骨髄炎を発症していることがわかりました。

虫歯も一種の感染症ですが、研修医は『熱がない=感染症ではない』と思い込んでいた。さらにCTの輪切りになった映像だけ見て『問題なし』と判断してしまったのでしょう」

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そのうえ、若手医師は患者が亡くなったり、訴訟を起こされたりすることを大きな「リスク」としてとらえ、避ける傾向が強まっているという。

フリーの麻酔科医である筒井冨美氏はこう語る。

「若手の医者は、産婦人科や外科など、難度が高く、精神的負担の大きい科を回避する傾向が続いています。

眼科や皮膚科など、そこそこ稼げるうえに比較的楽で大きなリスクを背負わなくてもいい科に勤めて、『プライベートを優先させたい』という価値観を持つ若い医者も多いのです」

'06年に福島県立大野病院で起きた産科執刀医の逮捕事件や、群馬大学医学部附属病院の腹腔鏡手術による死亡事故など、様々な事故が取り沙汰されるのを見ながら医学の道へ進んだ若手たち。

仕事はキツいのに給料は一緒、なにかあれば「殺人犯」呼ばわりされるなんてゴメンだ――。そういった考えを持つ若者が少なくないご時世である。

とはいえ、若いうちからしっかりとした臨床経験を積むこともなく、仕事はそこそこでいい、といったスタンスで治療にあたる医者に命を預けるのは怖いと感じるのは当然だ。

それでは、やはり多くの患者を診てきたベテランの先生と一蓮托生でいくべきなのか――。それもまた誤った認識だ。

「長いあいだやっていると、偏屈になってくる医者も多いですね。私が以前、外来診察をしていた病院に、看護師を一切信用しない先生がいました。『あの薬が効いていないみたいですが』と看護師が言っても、『様子を見ましょう』の一点張り。

しかもそれを何年も続けているのです。だんだんまわりもその医師とコミュニケーションを取るのをやめるようになっていき、結局その先生には病院を出てもらうことになりました」(私大病院教授)

モニターばかり見て患者とは目も合わせず、こちらが意見を言えば「私の言うことが聞けないのですか」と取り合ってもらえない。おまけに周囲のスタッフのことは見下して、せっかくのアドバイスを気にも留めない。