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本当の名医は薬を減らす! 患者によくある「大誤解」

薬が出てこないと不安…?
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患者を「実験台」にする医者

とりわけ精神安定剤のような精神科系の薬はやめるのが難しい。急にやめると離脱症状(禁断症状)が出るからだ。

「つい最近まで非常によく処方されていた薬にデパスという精神安定剤があります。気軽に処方できるので、肩こりの治療にも処方されていたくらいです。

しかしこの薬は非常に依存性が強く、出してくれとしつこくねだる患者が多くて困ります。長年服用していた薬を急にやめると、イライラ感、頭痛、動悸や悪心などの離脱症状が起きる場合があるので、医師の細かい指導が必要になってきます」(前出の内科医)

日本老年医学会は高齢者のポリファーマシーを問題視し、薬の種類が6種類以上になると副作用の頻度が急増するため、減薬するように勧めている。減薬のために患者と向き合おうとせず、薬をバンバン出すような内科医は、名医どころかヤブの典型なのだ。

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自信満々で手術に挑もうとする外科医も危険な存在だ。心臓外科の第一人者として有名な昭和大学横浜市北部病院循環器センター教授の南淵明宏氏が語る。

「たとえば海外に留学して新しい手術法を習得してきたという外科医にこのタイプが多いですね。

最新の技術ということでマスコミにももてはやされて、国際学会などでも偉そうに演説をぶつのですが、必ずしも結果が伴わない。ということは何人か『犠牲者』が出ることになります。そのような医者はすぐに業界から消えてしまいますが……」

外科医にとって自らの存在理由は「手術」しかない。だから当然、手術を行って成功することが使命だと考えている。そしてそのために、患者を手術の「実験台」としか見ない外科医もいる。

「前立腺がんの手術に、ダ・ヴィンチという手術支援ロボットを使う方法があります。鮮明な3D画像を見ながら、細かい作業を可能にする画期的な機械であることは確かなのですが、そもそも前立腺がんの手術が必要かどうかという問題があります。

とくに70歳を超えた高齢者の場合、前立腺がんの進行はゆっくりしているので、手術を行うことによる排尿障害などの後遺症の可能性を考えると、手術が最良の選択肢とはいえず、経過を観察したほうがいい場合のほうが多い」(前出の内科医)

ところが手術のためのロボットを病院が導入してしまえば、手術をしないと機械購入のための経費が回収できない。鳴り物入りの新技術で売っている外科としては少しでも手術数を増やしたい気持ちもあるだろう。こうして患者不在の観点で、手術が執り行われることもままあるのだ。

 

関西の拠点病院勤務の看護師が語る。

「最近では高齢者でも体力がある患者さんが増えて、亡くなるギリギリまで手術を希望される方がいます。外科医には、できるだけそういう期待に応えようとする人が多いですね。

正直、看護師の立場から見ていると、緩和ケアに切り替えたほうがいいのではないかと思うこともあるのですが、『こないだは80歳を超えた患者さんの手術に成功したよ』と自慢げに語る医者も多いですね」

確かに手術自体には成功したかもしれない。だが、手術による体力の低下で生活の質ががらっと変わってしまうケースもある。

たとえば胃の摘出手術をすれば、食べることの楽しみが大きく損なわれる。がんと共存しながら残りの人生を家族と一緒に過ごすという選択肢もあったはず。

本当の名医とは、薬や手術の誘惑と戦い、時にはそれを自制することもできる医者なのだ。

「週刊現代」2017年5月20日号より