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医療・健康・食 ライフ 週刊現代
本当の名医は薬を減らす! 患者によくある「大誤解」
薬が出てこないと不安…?

名医は薬を減らしてくれる

せっかく病院に来たのだから、なにか薬を出してもらわないと納得できない――そう思っている患者は意外に多い。

「薬をたくさん欲しがる患者さんは必ずいますね。特に大病院で何時間も待たされて、診察時間も短いとなにか『お土産』がないと満足できないのでしょう。

混雑している外来では、医者も時間をかけて『そのような薬は必要ありません』と患者を説得するよりも、さっさと処方して患者に帰ってもらうほうが楽なので、無駄な薬を出しがちになる」(麻酔科医の筒井冨美氏)

薬が出ないと診てもらった気がしない――その気持ちはわからないでもないが、根底には薬に対する患者の大きな誤解がある。新宿ミネルバクリニック院長の仲田洋美氏が語る。

「とりわけ最近では高齢者のポリファーマシー(多剤投与)が問題になっています。

薬の臨床試験は基本的に若い人を対象にシンプルな条件下で行われていて、実際に飲んだ時の相互作用については未知数の部分も大きい。だから10種類以上も薬を飲んでいる患者さんの場合、どんな副作用が起こるのか誰にも把握しきれないのです。

それでも山のように薬を出す医者はいまだに存在しています。本当に無責任な医療行為です。

患者さんのことを本当に考えたら、薬の処方は必要最低限にするべきですが、患者に向き合って話し合うのが面倒くさいから、とりあえず処方している。薬をたくさん出してくれるのがいいお医者さんだなんて、とんでもない誤解ですよ」

典型的なのは、風邪の患者に対して抗生剤を出す医者だ。

 

「抗生剤は細菌感染症に対する薬です。風邪はウイルス感染ですので、抗生剤を飲むことで風邪が治ることはありません。

風邪に特効薬はないので、基本的には対症療法しかありません。咳が出てつらいなら咳止め、喉が痛いなら痛み止め、高熱が続くなら解熱剤という具合です。

しかし、風邪には抗生剤が効くと信じ込んでいる患者も多く、いちいち説明する手間を省くために処方する医者がいまだにいます」(医療ガバナンス研究所・樋口朝霞氏)

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よその病院から移ってきた患者に、前の病院で処方されていた薬をやめさせるのが難しいという事情もある。神奈川県のクリニックに勤める内科医が語る。

「前の病院で降圧剤だけで4種類も出されていた患者さんがいました。他にも糖尿病の薬、高コレステロール血症の薬、精神安定剤、眠剤など計12種類もの薬を飲んでいました。

『ちょっと薬の数が多いですね』と断薬を勧めたのですが、『薬をやめても血圧が上がらないと保証できるのか』と言われてしまい、そのままになっています。

本当は薬を飲むこと自体が身体に負担をかけているのですが、もし降圧剤を減らして血圧が急上昇でもしたら、患者さんから訴えられるのが恐ろしいですからね。

本来はきめ細かい生活指導で塩分摂取量を減らしたり、定期的に運動したりするよう勧めるのがスジなのですが、そんなことをしても診療報酬が増えるわけではありません。実は薬を出すよりも、薬を減らすことのほうがよほど難しいのです」