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医療・健康・食 ライフ 週刊現代

「東大医学部卒」だからといって「ゴッドハンド名医」とは限らない

誰も「センスがないから辞めろ」と言えず

外科の名医は30人に1人

心臓外科医と聞けば、テレビドラマに出てくるような凄腕の「ゴッドハンド」をイメージする人も多いだろう。

日々、難度の高い手術に挑戦し、鍛え抜かれた技術で患者を死の淵から救う――だが、それは誤解にすぎない。医療ドラマの主人公のような外科医はほんの一部だ。

「日本には3000人の心臓外科医がいますが、そのうち認定は2000人。海外では年間100件手術をしていないと一人前とはみなされませんが、それくらいの数の手術をこなしている心臓外科医は、日本では100人にも満たない。逆にほとんど手術をしない外科医がたくさんいるのです」

こう語るのは医師・医療ジャーナリストの富家孝氏。このように肩書だけで見ていると、ヤブにあたる確率は名医にあたる確率よりはるかに高いことになる。

「私自身、心臓の冠動脈バイパス手術を受けた経験があります。このような手術でも、下手な医者にかかってしまえば、まず冠動脈がどこにあるかというところで躓いてしまう。

他にも動脈と静脈を間違って結びつけたり、血管の縫合が下手で出血が止まらないなんてことが起きる。そのうえ止血も下手で時間がかかるのです」(富家氏)

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手術の巧拙は持って生まれた手先の器用さと勘に加えて、どれだけ手術数をこなすかによっても決まってくる。

「たとえば東大医学部を出たからといって手術の名医になるわけではありません。手術の達人と呼ばれるような医者の多くは私大や地方大学の出身です。

今上天皇の心臓手術をした順天堂医院の天野篤院長も日大出身。かつては多くの病院で武者修行して腕を磨いてきました。

一方、手先が不器用で外科医としてまったくセンスがないのに、誰にも『センスがないから辞めろ』と言われないまま、裸の王様で外科医を続けている人もいるので要注意です」(富家氏)

とりわけ外科部長や教授という肩書があると、「エライ先生だから手術も上手いに違いない」と誤解した患者が、謝金をもって手術を頼みに来ることも多い。そうなるとカネを受け取った手前、自分の腕に自信がなくても怖々メスを握る医者も出てくる。

関西の大学病院に勤める看護師が語る。

 

「自分が手術が得意でないことをわかっている医師についたときのことです。オペがうまく進まず、イライラしたのでしょう。助手が器具をタイミングよく渡さないという理由で、ピンセットを投げつけたのです。

患者さんが麻酔で眠っているからといって、こんな感情的な行動をとる医者はまったく信用できません。

一方、腕がいいという評判の医師にしても、必ずしも患者さんのために手術を行うわけではありません。

本当は術後のケアや患者さんとの対話が必要な場合でも、そのような外科医は手術だけに時間を割きたがる。手術件数を増やすことがキャリアアップにつながりますからね。結果、手術の後はほとんど患者さんと顔を合わせない医者もいるくらいです」