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防衛・安全保障 アメリカ

トランプはアメリカを「戦争ができる国」に変えてしまったのか

政権100日の反乱がもたらしたもの

トランプ政権が誕生して100日、さまざまなことが起こった。少なくとも、外交安全保障政策に関していえば、発足当初に懸念された共和党政権とは思えない現実離れした「革命政権」的なものから、普通の「共和党保守政権」のものに変貌している過程にあると思われる。ともかく、大統領選挙中に示していた同盟国への厳しい姿勢は姿を消したといっていいだろう。

しかし、選挙期間中のトランプ陣営の主張であり、さらにいえば、オバマ政権以来の傾向であった孤立主義的な姿勢は払拭され、積極的関与が可能になったのであろうか。政権内の権力シフトの過程をみながら今後を占ってみる。

政権成立直後に行った大統領令の暴走

トランプ大統領は、1月20日に政権が発足して間もなく、矢継ぎ早に大統領令に署名して、普通の共和党政権ではないことを内外に印象づけた。オバマケアの撤回、メキシコとの国境に壁を建設するなどだが、これらの政策は、トランプ政権でなくとも、共和党の保守派政権ならば行っていたであろう政策だ。

たとえば、壁の建設とまでいかなくとも、不法移民の取り締まり強化は共和党保守派が期待していた政策だし、オバマケアには共和党全体が批判していた。

 

ただし、TPP離脱とイスラム圏からの入国制限の2つは共和党の既存ラインとは異なる政策だ。トランプ大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)離脱のための大統領令に署名したが、共和党は伝統的に自由貿易支持なのである。共和党の支持層には高所得者層の企業経営者と大規模農業の経営者層がおり、TPP離脱というのは彼らの利益には沿わない。

なによりTPPは、地域のルールを尊重しない中国に圧力をかけるという安全保障上のヘッジ策という側面をもち、中国に対する圧力強化を図っているトランプ政権の方向性とも矛盾する。

また、テロ対策としてイスラム教徒のアメリカへの入国を制限する、と発言して物議を呼んだ政策も大統領令として署名した。これはテロ対策として紛争が頻発し政情不安定な中東・北アフリカのイスラム教の特定国からの入国規制だが、現実的に考えれば、入国制限対象の7か国の中の1つであるイラクでは、政府軍がトランプ政権の主要政策である過激派組織「イスラム国」撲滅のための軍事作戦をアメリカと協力して行っている。

テロ対策を優先するのであれば大きな矛盾のある政策であった。裁判所からの差し止めの後、イラク政府からの要請もあり、トランプ政権は対象国からはずしたが、現実的な発想で政策を考えているとは思えなかった。

100日経過した時点で、この4つの主要な大統領令は、TPP離脱を除けば、大きな抵抗に会ってきた。このことはトランプ政権の求心力を損ない、もともと40%台前半の低い支持率を30%台に下げることになった。歴代のアメリカ政権は、基本的に100日目には支持率60%を確保してきたことに比べ、明らかに低迷している。

オバマケアについては、結局、5月4日に代替法案の修正案が下院を通過した。が、それ以前、3月24日に、いったん代替法案の下院本会議での採決を見送り、法案を撤回しなければならなかった。共和党内では多数がオバマケアに反対だったが、具体的な法案になると、ティーパーティー系の右派と、無保険者を作り出すことで来年の中間選挙での有権者の反発を恐れる中道派という左右からの抵抗に直面したのだ。

国境の壁の建設では、トランプ大統領はメキシコ政府に費用を払わせると主張していたが、メキシコ政府は同意しなかった。ために当初、アメリカ政府の費用で建設する方針に変えたが、今度は、これらの費用を議会が来年度の予算案に計上しなかった。イスラム教徒の入国制限にいたっては、裁判所が憲法違反だとして差し止めを命じ実行できなかった。