規制緩和・政策 企業・経営 週刊現代
日本郵政は官僚たちがダメにした?「4003億円損失」の裏側
これでは誰も経営に名乗りをあげない

なんちゃって民営化

日本郵政は、オーストラリアの物流子会社トール社の業績悪化から、4003億円の減損損失を計上した。これで'17年3月期の連結最終損益は400億円のマイナスとなり、'07年の郵政民営化以来初の赤字へ転落することになった。

これを受け、日本郵政社長の長門正貢氏と日本郵便社長の横山邦男氏は経営責任を認め、役員報酬のカットなどを実行する。

日本郵政グループは上場から1年が過ぎているが、株価も低迷しているのが現状だ。ここまで日本郵政の経営が悪化しているのはなぜか。

たしかに日本郵政は'07年から「民営化」されたが、実際のところは「なんちゃって民営化」であると言わざるを得ない。というのも、自民党の小泉政権時代に実現した民営化だが、民主党に政権交代すると、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株を政府が一定割合保有することを決めたという経緯があるからだ。

トップ人事を見てもその傾向がある。

小泉政権の'06年1月、三井住友銀行元頭取の西川善文氏が日本郵政の社長に就任。西川氏は、就任時に多くの民間の人材を引き連れて日本郵政に来た。ここからは、西川氏の民営化に対する強い思いがうかがえる。日本郵政はグループ全体で従業員20万人以上の「マンモス企業」である。これを民営化するとなると、大量の民間人幹部が必要なのだ。

ところが、民営化に積極的でない民主党政権下の'09年10月、西川氏は更迭。そして、西川氏とともに来た民間の人材も日本郵政から追い出されてしまった。

 

経営力のない人物がなぜ社長に?

西川氏の後任は、大蔵官僚OBの斎藤次郎氏だったが、彼は当時の民主党幹事長小沢一郎氏の「お墨付き」だった。民主党が公約していた天下り根絶はまったく嘘だったのである。結果として、民主党政権によって日本郵政は「再国有化」が進められていった。

再び自民党へ政権交代する直前の'12年12月、斎藤氏は臨時取締役会を開き突然辞任、後任に大蔵省の後輩である坂篤郎副社長を指名した。しかし、安倍政権はこれに激怒。政権交代後の'13年6月に就任したのが、東芝出身の西室泰三氏である。

今回巨額の損失を出した豪トール社を6000億円以上の高値で買収した人物こそ、この西室氏である。西室氏は東芝時代にも、巨額損失の原因となっているウェスチングハウスの買収に関与したという「前科」もあり、率直に言ってその手腕は疑わしい。

また、そのような経営力に不安のある人物しかリーダーになれない日本郵政の体質にも問題があるといえる。実際のところ、本当に優秀な経営者であれば、政府が株式を保有しているために制約が多い会社に来ようとは思わないだろう。

殊勝にも一人で民間経営者が来たとしても、周りを元官僚で固められる。頭だけ民間に代えても、首の下は官営企業そのものだ。

また、西川氏更迭のときに追放された民間人も悲惨な待遇を受けている。そのときは西川氏の尽力で救済された人も多いというが、彼にしかできない芸当でもある。

この顛末をよく知っている経営者は、日本郵政のかじ取りに二の足を踏んでしまう。こうした何重もの制限がある日本郵政が赤字になるのは当然だ。

週刊現代』2017年5月20日号より