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経済・財政 国際・外交
ニッポン式の国際銀行が、陰でアジア諸国の不興を買っていたワケ
だからAIIBの存在感が増しているのか

アジア経済の熾烈な主導権争いが始まった

麻生太郎副総理(財務大臣)は大型連休終盤の5月6日、横浜市で開かれたアジア開発銀行(ADB)の年次総会で演説し、アジア・太平洋地域のインフラ整備のため2年間で4000万ドル(約45億円)を新たに拠出すると表明した。

副総理によると、この大盤振る舞いの狙いは、日本とADBの連携を一段と強めて、今なお3億人を超える貧困層を抱えるアジア・太平洋地域で「持続可能な成長」を実現することにあるという。この地域では、インフラ投資の資金ニーズが今後15年間で26兆ドルに達するとの試算もあり、放置できないというわけだ。

だが、中国の習近平国家主席が新シルクロードとでも呼ぶべき「一帯一路」構想を掲げて、設立からわずか2年で70の加盟国・地域(ADBのそれは50年で67カ国・地域)を獲得したアジアインフラ投資銀行(AIIB)との主導権争いの側面も見逃せない。プラントやインフラの輸出を巡る国際競争で、日本企業の命運を大きく左右するからだ。

日本は、米国を上回るADBの最大の出資国である。とはいえ、日本主導のADB運営にもどかしさを感じている加盟国は少なくない。総裁職を独占してきただけでなく、投融資に厳格な審査を設けたことで、迅速かつ容易に途上国の資金ニーズに応える体制になっていないからだ。

果たして、この程度の大盤振る舞いで、日本はADBを通じたアジア太平洋地域での存在感を維持できるのか。その現状と課題を検証しておこう。

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総裁職を独占してきた罪

ADBは、世界銀行、米州開発銀行、アフリカ開発銀行、欧州復興開発銀行と並ぶオーソドックスな国際開発金融機関の一つだ。創設は1966年で、その出資比率(2015年、承認ベース)の上位5ヵ国は、日本(15.6%)、アメリカ合衆国(15.5%)、中国(6.5%)、インド(6.3%)、オーストラリア(5.8%)となっている。

しかし、当初から、ADBの運営を日本主導で進めていくことの難しさは明らかだった。象徴的なのは、本部の立地決定プロセスである。マニラを推すマルコス政権下のフィリピンに敗れ、東京への誘致に失敗したのだ。

あの当時に比べれば太平洋戦争の加害者としての日本へのアレルギーが格段に薄れたとはいえ、初代の渡部武氏から現在の中尾武彦氏まで、9代に渡り総裁職を独占してきた事実は重い。

加えて、限られた資金の有効活用という大義名分のため、設立当初から「援助機関でなく、(投融資効率を重んじる)銀行」の理念を掲げて「加盟国の(経済事情に合せた処方箋を出す)ホームドクター」を標榜して、投融資に厳格な審査を設けてきたADBの運営姿勢が、資金ニーズの旺盛な国・地域には使い勝手が悪いことも否定できない。