経済・財政 アフリカ
ピケティと並ぶスター経済学者が政策研究にもたらした「ある革命」
世界の貧困とこうして闘え!
峯 陽一 プロフィール

結果は厳密で、説得力がある

これについては、デュフロ氏たちのマダガスカルでの調査によると、統計データを示した説明会は大いに効果的だったが、お手本の講演会にはあまり効果がなかったらしい。後者はどうやら、教育は宝くじのようなものだ、という印象を与えたようだ。

自分はこの人みたいに大成功するとは思えない、という反応が出てくるのも、考えてみたら当たり前のことだ。マダガスカルの農民たちは、成功者による激励よりも、客観的な統計データの方にポジティブに反応したのだという。

子供たちの通学には物理的な障害もありそうだ。たとえば、寄生虫の広がりがある。腸内に寄生虫がいる子供たちは、疲れやすく、慢性的な貧血状態になる。これでは学校に行けないし、行っても勉強に集中できない。だったら、寄生虫を駆除すると就学率も改善するだろう(そういえば筆者も、小学生時代にポキールという寄生虫検査をしていたのを思い出す)。

ここでもRCTを実施するのだが、教室のなかで駆除薬を服用する子供と服用しない子供をランダムに分けても意味がないことがわかった。せっかく寄生虫を駆除できた子供に、教室の隣の子供から寄生虫が移ってくるからだ。生徒全員が駆除を受ける学校と、そうしない学校とを、学校単位でランダムに選択しなければいけない。

さて、デュフロ氏のチームの目的は、政策の評価だ。

 

それぞれの政策にはそれぞれ一定のコストがかかるので、子供1人が追加的に1年長く通学するのを実現するのにいくら費用がかかったかを、政策ごとに計算することができる。政策の影響がない対照群と比較するので、結果は厳密で、説得力がある。

デュフロ氏たちの調査結果を総合すると、教育年の追加1年分を実現するのに、教育の利益を示す説明会は2.5ドルしか費用がからなかった。寄生虫の根絶も3.5ドルと安上がりだった。それに、女子生徒への制服配給の61ドル、男子生徒への制服配給の121ドルが続く。

一番高くつくのは、子供を小学校に通わせることを条件とする社会保障給付金で、1人1年の通学を達成するのに6000ドルもかかった。

ひとりでも多くの子供を、少しでもドロップアウトしないで学校に通わせたいと思うなら、費用対効果の観点では、説明会の開催がいちばん手っ取り早いことになる。数字を見ると、なるほど、だ。