経済・財政 アフリカ
ピケティと並ぶスター経済学者が政策研究にもたらした「ある革命」
世界の貧困とこうして闘え!
峯 陽一 プロフィール

手法は基本的にシンプルで、薬の治験の場合と変わらない。ある政策の対象となる人々のグループを編成し、その対象とならない人々のグループを編成する。

これらの人々はランダムに選ばれるから、政策の対象となるかならないかを除いて、二つのグループは同一視できるくらいに非常によく似ている。

そうやって政策の実施の前と後でグループの変化を観察すると、政策の効果が客観的に測定できるというわけである。

いちばん効果的な施策は何か

一例としてまず、子供に学校に行ってもらうことは大切だ、という前提を確認してみよう。

筆者の80歳の両親は、若い頃は九州の離島の小中学校の教員だったが、1950年代、頑固な漁師の親を説得して子供たちを学校に行かせるのは大変だった、と話してくれたことがある。同じような村落は今でも世界中にあるはずだ。

では、子供に実際に学校に通ってもらうにはどうしたらいいのだろうか。

 

教育費が家計の負担になっているのかもしれない。ケニアでは制服の購入費の負担が大きいという。

そこで同国では、ドロップアウトせずに学校に通い続ける生徒を対象に制服を支給する実験が行われた。支給を受けるグループと支給を受けないグループで、退学率にどのくらい変化が生まれるかを知るためである。

メキシコでは、この制度を導入する前に、子供が学校でマジメに勉強することを条件に、貧困家庭に社会保障手当を給付する制度が導入されたが、そこでもRCTが実施された。

母親たちは、給付金をもらえるなら子供を学校に行かせるのだろうか、それとも、給付金をもらうよりも、子供を働かせて家計に貢献してもらった方がよいと思うだろうか。

メキシコでは条件が同じ村々を選んで、給付金を提案する家庭と提案しない家庭での就学率の差を比べる実験が行われた。

それにしても、物質的なインセンティブを与えることが本当にいちばん効果的なのだろうか。

学校に通った子供と通わなかった子供では、未来の所得が大きく違うはずである。「学校に行ったら得ですよ」――このことを親たちと子供たちに、統計データを見せて説明してみたらどうだろう。あるいは、勉強したおかげで成功したお手本に講演してもらったらどうだろう。

「先輩の話を聞けるのはいいですね」で済ませるのではなく、こうした試みを実施した場合と実施しなかった場合で、子供が本当に熱心に勉強するようになったかどうかを数字で厳密に比較してみるわけだ。