アキ工作社の製品〔PHOTO〕現代ビジネス
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週休3日、定年廃止で業績が伸びた!ある地方企業の「逆張り戦略」

アキ工作社・松岡社長に聞く【前編】

マネキンや動物、アニメのキャラクターなどの精巧な段ボール造形品が人気を集め、日本全国だけでなく、欧米やアジア、中東など世界20ヵ国以上に製品を輸出しているアキ工作社。グーグルやエルメスへの納入や、ディズニーとコラボしての製作など、世界的企業ともビジネスも進めている。

アキ工作社の所在地は、都市部ではなく大分県国東市の小さな町。4年前から「週休3日制」を実施して成功を収め、地元固有の「国東時間」を提唱している。

オフィスは廃校になった小学校の校舎をそのまま使っており、円形状の国東半島の内陸部、鳥の鳴き声の他はほとんど何も聞こえないのどかな場所にある。

ローカルの力で、どうやってグローバルに高く評価されるものを作り出すことができたのか。数々のユニークな取り組みを松岡勇樹社長(54歳)が語った。

アキ工作社の松岡勇樹社長アキ工作社の松岡勇樹社長〔PHOTO〕現代ビジネス編集部(以下、すべて)

東京の時間ではなく、田舎の時間で仕事を

僕はアキ工作社を1998年に創業しました。いろいろなことがある中で少しずつ業績を伸ばしてきたのですが、2013年、思い切って「週休3日制」を始めました。

当時、仕事の種類も量も増えていく中で、社内はどんどん忙しくなっていました。国内だけでなく海外でのビジネスも同時にやっていることもあって、社員に皆、余裕がなくなってきたんですね。

僕が当初、東京から国東に帰ってきて起業した理由の1つは、「東京はもういいか」と思ったからなんです。

とにかく人が多いし、家賃も物価も高い。なのに有益な情報が多く得られる場所とも思えず、むしろ国東のような自然の中にいる方が吸収できる情報量は多いのではないか、と考えたんですね。

静かな環境の中、集中して仕事をすると同時に、休みの日には豊かな自然に触れ、釣りに行ったりしてリフレッシュする……と、理想としてはそんなふうに思い描いたわけです。

ところが実際に国東で働いてみると、そううまく行くとは限らなかった。

お客さんは東京など都会に集中しているので、仕事が増えて忙しくなると、どうしても都会の時間に合わせて僕らも仕事をすることになるわけです。東京だけでなく、ニューヨークやパリや中東の時間にも合わせなきゃいけない。

そうすると、せっかく恵まれた自然の中にいるのに、休日に外出する余裕もなくなってしまうんです。僕の自宅は、目の前が海なんですけど、釣りにも行けない。行く時間がないんですね。仕事が増えるにつれて、会社全体がそうなっていきました。

これは何かおかしいんじゃないか?

ちょっと立ち止まってそう考えたのが2013年のことでした。国東にいるのに、自分たちの時間ではなく都会の時間に合わせて仕事をし、都会にいるより消耗するのは変ではないのか、と。

 

また、それに先立つ2011年の東日本大震災も、僕の考え方に大きな影響していました。1つ1つ時間をかけて築いてきたものが、大きな地震や津波があれば一瞬にして消えてしまうとリアルにわかったのは、大変なショックでした。

では、そういう非常事態になったときに頼れるものは何なのか。さらに復興の中核になるのは何なのか。

やはり、昔から続いている地域のコミュニティの仕組みがものすごく大事ではないのか。それをしっかり維持していくには、人々が地元ならではの豊かな時間の中で暮らし、働けるようにする必要があるのではないか……。

大震災以降、東北の方々が頑張っておられる様子を報道で見ながら、ずっとそういったことを考えていたんです。

都会には都会の時間がありますが、国東には国東固有の時間があります。時間の質は決して全国どこでも均等ではない。国東に来て、住んでみればすぐにわかることです。

それなのに、都会も田舎も、それどころか全世界共通で1日は24時間、1年は356日とされている。いつもいつもそれに従っていると、せっかく豊かな生活ができる田舎にいるのに、かえって疲弊していくのではないかと考えるようになったのです。

当時は海外出張も増え、たとえばニューヨークに出張して、帰ってきて、それからまた東京に日帰りで出張……というように、スケジュールがタイトな時期だったせいもあります。