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深刻な後遺症、植物状態…死ぬより怖い「投薬ミス」の実態

病院で、薬局で、老人ホームで続出!

投薬ミスで死期が早まったり、後遺症が残ったりすることは実は珍しいことではない。表沙汰になっていないだけで、あなた自身や家族にも起こりうる医療事故の実例を追った。

薬剤師からかかってきた電話

「申し訳ございません。お薬を渡し間違えておりました。今からお宅に取り換えにうかがってもよろしいでしょうか?」

上野光三さん(仮名、72歳)のもとに、慌てた声の薬剤師から電話がかかってきたのは今年の始めのことだった。

数日前に上野さんは、かかりつけの病院で処方箋を受け取ったが、普段行く薬局ではなく、出先の初めて行く薬局で薬を受け取っていた。電話をかけてきたのは、この初めて訪れた薬局だった。

よくよく聞けば、いつも上野さんが飲んでいる降圧剤のアテレックをアレロック(花粉症でよく使われる抗ヒスタミン剤)と取り違えて出してしまったのだという。

「なんていい加減な薬局だと腹が立ちました。幸い、たいした副作用が出るような薬ではなかったので、大事には至らずに済んでよかった。処方箋やお薬手帳もちゃんと出したのに、こんな初歩的なミスが起きるのかと驚きました」(上野さん)

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実はこのようなミスは、日々、いたるところで起きている。薬局に行けば、薬剤師たちが何重にもチェックしていて、ミスなんか起こるはずがないと思っている人も多いだろう。だが、病院や薬局を盲信してはいけない。

上野さんのケースは健康被害もほとんどなく、医療事故と呼べるようなものではないかもしれない。だが、ミスが重なれば、重篤な副作用が出て、後遺症が残る可能性もある。最悪の場合、投薬ミスが死に至るケースだって考えられるのだ。

実際に投薬ミスで、深刻な状態にいたったケースがある。

「妻は優しい人でした。友人も多く、亡くなったときには約550人の方がお通夜・告別式に参列してくれました。副作用のせいであのような形で最期を迎えることがわかっていれば、絶対に薬を飲ませなかったでしょう」

こう語るのは川崎市在住の長濱明雄さん(42歳)。妻の裕美さんは'14年に東京女子医大病院で脳腫瘍の治療中に、大量の抗てんかん薬を投与され死亡した。

明雄さんは今年3月28日に大学病院と担当した医師2人を相手取り4300万円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。

「脳腫瘍がわかったのは、'13年の9月でした。別の病院で手術を行い、治療をしていましたが、悪性の脳腫瘍であったため、通常の医療に加えて先進医療が受けられるという東京女子医大に移ったのです。

妻は長年サンバを趣味にしていて、再発が発覚した後も、'14年の8月23日のカーニバルに出たいと言っていました。そしてカーニバル後の9月3日か4日に手術を受ける予定でした」

ところが8月20日、裕美さんは職場でてんかん発作を起こして倒れてしまった。運ばれた外来で点滴を受け、発作は収まったが……。

「外来担当の脳外科医師から『主治医に連絡したところ、サンバに出るためには、抗てんかん薬の血中濃度を上げたほうがいいということになった。通常徐々に量を増やすところ、最初から最大量を処方する』と告げられました。それで処方されたのがラミクタールでした。

その時は、命を落とすリスクも重大な皮膚疾患が出るリスクについても、まったく説明がありませんでした。承諾書にサインすることもなかった」

 

ミスを闇に葬る病院

明雄さんが処方箋を持って薬局に行くと、「本当にこの量と言われたのですか」と聞き返されたという。そして薬剤師が担当医に連絡し、確認したうえで薬が処方された。23日のカーニバルにはなんとか出られたが、そのころからふらつきがひどくなり、ろれつが回らなくなったという。

「29日早朝、ふらつきが強く、うまく歩けずに転倒したため、緊急入院しました。入院後も39度の熱が出たり、顔が赤くなったりしました。その後皮がむけるなどの重大な皮膚疾患が出て、深刻な状態になった。中毒性表皮壊死という症状でした。点滴を止めるテープをはがすときも、皮膚がめくれて痛みで叫ぶほどでした。

結局、全身麻酔をかける前に『頑張ります』と言ったのが妻の最後の言葉になりました。最後まで生きる努力をしていたんです。一進一退が続きましたが、9月9日の昼、妻は亡くなりました。

主治医は、発症時の説明で『100万人に1人の割合の発症だ』と妻の体質のせいにして、自身の責任を認めませんでした。斎場でも『力及ばず申し訳なかった』と口にはしましたが、責任を認めたわけではなかった。

妻のことがあった半年前にも、東京女子医大では薬の誤投与で小さな子供が亡くなっています。私たちのように一縷の望みを抱いて女子医大に行く患者さんも多い。責任の所在を明らかにして再発を食い止める努力をしなければ、患者さんにまた同じ思いをさせることになります」