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サラリーマンは退職金で会社を買いなさい

500万円で優良企業の社長になる方法【前編】
三戸 政和 プロフィール

年金支給額が減り、退職金も期待できず、医療費や税負担が今後ますます上がっていくのに、60歳で退職、数千万円程度の貯金では、「悠々自適なセカンドライフ」などと呑気なことを言ってはいられません。もし年金のほかに夫婦で月々20万円の貯金を切り崩して使うとするならば、40年間で9600万円が必要になります。そのほかに、病気や怪我、子供、孫のイベントなど、何にどれだけかかるかわかりません。

そこから始まる40年もの長い老後を、“老後破産”することなく生き残るためには、現役時代を延ばすしかないのかもしれません。実際『ライフ・シフト』には、これからは、「教育→仕事→引退」という3つのライフステージのうち、2番目の「仕事」のステージが長くなり、引退年齢が70~80歳になるだろうと書かれています。

しかし現実には、日本のほとんどの企業がそんな年齢まで雇ってはくれません。退職後に再雇用制度を利用してもたいていは65歳までです。

飲食店には手を出してはいけない

確かに、大企業勤めの人で、役員になり、天下りで関連会社の社長になることができれば、引退を延長することができ、それなりの報酬と2度の退職金を貰えて安泰です。

それが叶わなかった場合、65歳から新たな就職先を探しても、よほど特殊な技能や資格を持たない限り、求人はほとんどないのが実情です。では60代で退職したものの、老後資産が十分にない人は、どうしたらいいのでしょうか。

私はしばしば、退職後の飲食店経営に夢を持つ人に出会いますが、断言しましょう。それだけは絶対に止めた方がいい。飲食業の経験がない人が、「コーヒーが好き」「ジャズが好き」「酒が好き」「料理が好き」などという趣味の延長で、喫茶店や居酒屋、バーなどを始めてしまうことです。失敗して財産をすべて失うどころか、借金を背負ってしまい、悲惨な末路を送る可能性が極めて高いです。

 

私はこれまでさまざまなビジネスモデルを見てきましたが、飲食店経営は最も難しいビジネスの一つです。立地の選定、資金繰り、店舗作り、商品企画、仕入れ、原価管理、製造管理、採用、人事管理、マーケティングなど、経営学のあらゆる要素がすべて詰まっているからです。それでいて店舗は固定されて動かすことはできず、食中毒や、持ち逃げなどリスクは多く、利益率は非常に低い。素人が安易に始めてできるようなものではないのです。

そもそも私は脱サラ起業には反対です。ベンチャーキャピタリストとして多くの起業家に投資をしてきた経験からいえば、新たに会社を創って軌道に乗せるというのはとてつもなく難易度が高い。日本では起業して5年後に残っている会社は15%、10年後に残っている会社は、たったの5%しかありません。

あなたが今まで培ってきた知識と経験をほぼそのまま生かすことができ、他社に比べて明確な優位性があり、最初から多数の顧客がついていて、初年度から黒字が確実であるのなら、起業もいいかもしれませんが、一つでも当てはまらないならば、やめた方がいいです。赤字がつづいて、将来の見えない恐ろしさに耐えることができる精神力を持っているひとはまれです。

そんな「ゼロイチの起業」より、私がお勧めしたいのは、知識と経験を活かせる中小企業を見つけ、個人でM&Aをして、経営を引き継ぐこと……つまり、「会社を買う」ことなんです。

日本はいま、「後継者不足」

はっきり言って、日本のビジネスマンは0から1を立ち上げるのは得意ではありません。ほとんど上手くいきません。一方で、すでに回っている事業をマネジメントし、10を15にしたり、100を110にするのは得意です。大企業にはそうした経験とノウハウがある人はたくさんいます。起業するより、10年以上生き残っている会社の社長をやる方が、はるかに現実的・効率的であり、向いているのです。

一般的にM&Aと聞くと、ある程度大きな規模の会社が、それよりも少し小さい会社を買収するイメージを持つ人が多いかもしれません。買収によってマーケットシェアを拡大したり、多角化したり、事業の一貫性を高めるなど、資金的余裕のある企業が取る成長戦略のイメージです。

しかし現実には、売上高数千万円から数億円程度の小規模経営の会社を、同じような規模の会社や個人が買収するといった、小さなM&A案件の数は増えつつあります。なぜなら今、会社を買って欲しいと考えている社長が多くいるからです。

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