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EU 金融危機 フランス

仏大統領選、結果次第ではイタリア発「金融危機」が起こる可能性

一気に銀行株売りがはじまれば…

4月23日に実施されたフランス大統領選挙の第1回投票では、中道派の独立候補であるエマニュエル・マクロン氏(元経済産業デジタル大臣)が得票率で首位だった。極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は第2位につけた。

第1回投票の結果、過半数を確保する候補者は出なかった。このため、マクロン氏とルペン女史は5月7日の決選投票に進むことになった。

4月24日、東京時間の朝方にフランス選挙の結果が伝わると、金融市場には楽観的な見方が広がった。特に市場参加者の安堵を誘ったのは、投票が迫る中で支持率を獲得してきた、急進左派のジャンリュック・メランション氏が4位となったことだ。

一部では、ルペン女史とメランション氏が決選投票に進めばフランスがEUからの離脱に向かうなど、欧州全体が未曽有のリスクに直面するとの懸念があった。

第1回投票後の世論調査ではマクロン氏を支持する有権者が6割に上り、決選投票ではマクロン氏が勝利するとの見方も多い。欧州各国の首脳からも、中道派のマクロン氏への期待は強い。

同時に、今回の大統領選挙ではっきりしたことは、フランスの社会が共和党と社会党による政治体制に“ノン(Non)”を突きつけたことだ。

政治経験に乏しいエリートのマクロン氏が熱狂的な支持を集めたというよりは、消去法による選択との印象は否めない。今回の結果がフランスの政治安定につながると楽観するのは早計だろう。

ルペンとマクロン〔PHOTO〕gettyimages

フランスは、かくも複雑

“ポピュリズム政治がフランスで進み、EUが分裂に向かうか否か”、これが今回の大統領選挙の焦点だ。

この背景には、“保革共存=コアビタシオン”と呼ばれる政治運営が、国民の不満を解消できなかったことがある。

フランスの大統領は国民の投票によって選ばれる。一方、首相は議会の多数派の代表として選出され、大統領に任命される。1986年に社会党のミッテラン大統領が、共和党の前身政党に所属したシラク氏(元大統領)を首相に任命して以降、社会党と共和党が大統領と首相を出し合い、政治が運営されてきた。

 

フランスの保革共存は、連立政権とは異なり妥協を必要とする。このため、雇用慣行などの制度刷新など、潜在成長率の引き上げにつながる構造改革は進みづらかったとみられる。それは、リーマンショック後から現在に至るフランス経済の低迷の一因になった可能性がある。

第1回目の投票結果を見ると、共和党のフィヨン氏は第3位、社会党のアモン氏は5位にとどまり、ともに決選投票に進むことはできなかった。これは、フランスの有権者が保革共存の政治体制を拒絶したことと言い換えられる。

明らかに、フランスの社会は変化を求め始めたのである。それが、既存政党に属さない候補者であるマクロン氏とルペン女史への支持に繋がった。

敗北した共和党のフィヨン氏と、社会党のアモン氏はマクロン氏への支持を表明した。メランション氏は態度を示していないが、共和党と社会党を支持する有権者の票がマクロン氏に流れることで、決選投票はマクロン氏に有利に進むとの見方は多い。

中長期的に考えると、マクロン氏が重視するEUとの関係強化はフランスには不可欠だ。フランスが自国第一の政治を優先し、保護主義的な政策を進めると、経済活動は低迷する恐れがある。

その点で、マクロン氏が第1回目の投票で首位を確保したことは、フランスの有権者が冷静に自国の中長期的な展開を見据え始めた可能性を示している。

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