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保険料がまたムダに!? こんなに変わらない厚労省と年金機構の体質

年金「支給年齢」引き上げ検討のウラ側

厚生労働省年金局による「洗脳工作」が、はじまりつつあるようだ。少子高齢化によって年金財政が逼迫している、との御定まりの理由で、年金の支給年齢を、現在の65歳からさらに引き上げるための世論工作である。

追い風となっているのが、日本老年学会による高齢者の定義の変更だ。これまで高齢者とされてきた65歳は、まだまだ元気で働ける現役世代と位置づけ、75歳以上を高齢者と定義し直した。おかげで、年金の支給開始年齢について議論する、格好のとば口ができたわけである。

早速、働き方改革を議論している自民党の「プロジェクトチーム」は、支給年齢を引き上げる方向で年金局に検討を求めたという。

厚生年金の支給開始年齢の引き上げは、過去、'00年の法改正で、60歳から65歳への段階的な引き上げが決められている。

「この引き上げは、来年ようやく完了する。それを待たずに、いまから70歳引き上げへの地均しに入ろうというわけです。法改正と、引き上げ完了の時期にタイムラグがあるので、連続して引き上げを画策していることに国民は気づきにくい。それだけに、年金財政の逼迫を連呼すれば、簡単に洗脳できる」(年金局関係者)

支給年齢を引き上げれば、支払いが減り、手元に残る保険料が増える。その分、年金局や日本年金機構側が、勝手に使えるカネも増えるというわけだ。

'00年の改正では、彼らはまさに、シロアリのように年金保険料に群がった。法改正を周知するパンフレットなど印刷物を、当初、法案の成立予定だった'99年から5年にわたり毎年、大量に購入、ろくに配布することなく、倉庫に積み上げたままだった。

一方で、購入業者などからバックリベートを約7億8500万円受け取り、職員の飲み食いに使っていたのである。

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今回、再び、年金の支給開始年齢が引き上げられれば、同じことが繰り返される可能性がある。そうでなくても、年金保険料にたかるのは、彼らの止められない習性だ。

私が、委員を務める社会保障審議会年金事業管理部会は、機構の事業計画を審議する役目を負っている。今年度の新規事業として導入される「TV会議システム」と「TV電話相談」について、私は何度も質問したが、ついぞまともな説明を受けられなかった。

「TV会議システム」は、本部と全国の年金事務所を結び、会議するというものだったが、300以上もの事務所と一斉に会議などできるものなのか。

また、「TV電話相談」にしても、職員が出張し、年金相談に赴くこと以上の成果が得られるとは、とても思えなかった。まして、これらのシステムにかかるトータル・コストについては、言葉を濁して説明しようとしないのだ。

要するに、効果を期待して導入するのではなく、導入することが目的なのだろう。そして導入の先にあるものについては、これまた機構幹部は一様に口をつぐむのだ。

改めて断るまでもないが、これらの購入財源は、われわれが支払った年金保険料である。その年金保険料は、国民の老後資金であり、ある意味、税金より神聖なお金だ。

その貴重な財源を使いながら、こんなことでは、年金制度への信頼回復など、およそ望むべくもない。

 
岩瀬達哉(いわせ・たつや)
55年和歌山県生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリー。'04年、『年金大崩壊』『年金の悲劇』で講談社ノンフィクション賞受賞。新刊に『ドキュメント/パナソニック人事抗争史』(講談社+α文庫)

「週刊現代」2017年5月6日・13日合併号より