資産運用改革を進める森信親・金融庁長官 photo by gettyimages
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銀行の大淘汰が始まった!「手数料で荒稼ぎ」時代の終焉

金融庁は本気だ

なぜその商品をすすめるのか?

筆者が銀行窓口に行ったときのことだ。キャッシュカードの暗証番号を変更するためだっただろうか。手続きをしているあいだ、受付の女性担当者(テラー)から突如、話を振り向けられた。

「お客様、資産運用のお考えはございませんか。貯蓄性の保険商品などご興味ありますか」

おそらく、預金100%という筆者の資産構成(ポートフォリオ)を画面で確認し、資産運用の「ド素人」と値踏みし、販売のチャンスとばかりに話を持ちかけてきたのだろう。

貯蓄性保険商品とは、掛け捨て型の保険とは異なり、保障に加え、貯蓄も同時にできる商品だ。一方、掛け捨て型に比べ、手数料は非常に高く、しかも途中解約をすれば損は免れず、長期間払い続けるしかないという一面を持つ。

「どんな商品があるのですか?」

さも関心があるかのように取り繕い、ひとしきりテラーの説明する外貨建てや終身保険など2〜3の金融商品の話を聞いたあたりで、核心の質問をぶつけてみた。

「あなたはどれくらいの数の商品を暗記しているのですか?」

え、という一瞬戸惑う表情を浮かべたテラーだったが、案外素直に教えてくれた。

「5つ、ですね」

誠意あるテラーの方をだまして申し訳なかったが、筆者はこの答えが聞きたいだけだった。

 

テラーの立場では当然だろう。銀行業務という、じつに複雑多岐な仕事を迅速かつ正確にこなさなければならない、非常に神経を使う仕事を要求されるテラーにとって、金融商品の販売までしなければならないとなると、もはや悪夢だ。せいぜい5つくらいの暗記が関の山だろう。

テラーの方々の苦労に思いをはせていると、一つの疑問が湧いてきた。この銀行はどうして数ある金融商品の中から5つを選び、テラーに売らせているのだろうか。

他の商品ではなく、5つの商品の何が違うというのか。どこがオススメポイントなのか。そもそも誰がどう選んだのか。

残念ながら、遂にこのテラーからは、その説明はなかった。まさか全国に展開する支店で働くテラーが、それぞれ勝手に「オススメ商品」を選んでいるということはないだろう。

別の大手銀行では、「売れ筋商品」という一覧表が顧客に示されると耳にした。世に数多ある商品をすべて提示して「売れ筋」になったわけでもなかろう。つまり、売れ筋とは、銀行が何らかの事情で選んだ商品の中だけでの話だ。では、銀行はどう商品を選んだのか。

どうやら我々顧客には見えないところで、何かが決まっているようだ。

あなたは「売られている」

あなたは銀行であれ、証券であれ、窓口で「買っている」のではない、あなたは「売られている」のだ。

専門的な知識を有した一部の方を除いて、多くの人は銀行を信用し、依存している。しかし、その銀行が、自らの収益最大化のためだけに選んだ「オススメ商品」を売りつけてくるとしたらどうだろう。それは真に我々の資産形成につながるものなのだろうか。

投資経験もない、自分で買う気もない窓口担当者が数十万円、数百万円、場合によっては数千万円の金融商品を売っている。どうしてこのようなことが許されるのだろうか。

クルマに乗ったことがなく、愛着もない営業担当者がそのクルマを売っているだろうか。「規制されていない限り、ビジネスは自由だ」と、どのように胸を張っても明らかに異常だ。

いまの資産運用・資産形成サービスは、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

顧客に見えないところで売る商品が決まり、銀行窓口の売り手も「なぜだか分からない」「行ったことすらない」トルコやブラジルなどに投資する手数料の高い商品を顧客に売りつけ、顧客もよくわからないまま買ってしまい、損失を出して「二度と投資なんかするものか」と怒りを募らせてきた。