Photo by iStock
政治政策 社会保障・雇用・労働

雇用ルールが無いまま広がる「ジョブ型正社員」、これでいいのか?

このままでは経営者の一人勝ち

大企業では6割以上が導入も…

働く現場で「ジョブ型正社員」が広がりつつある。政府の規制改革推進会議は実際に導入している企業からヒアリングするとともに、4月13日、関係者を集めて都内で公開ディスカッションを開催した。

問題点を整理してみよう。

そもそも、ジョブ型正社員とは何か。(以下、資料はhttp://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/discussion/170413/agenda.html と、http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/jinzai/20170310/agenda.html

規制改革推進会議の前身である規制改革会議の報告書は「職務か勤務地、あるいは労働時間のいずれか、または複数の要素が限定されている社員」をジョブ型正社員と定義している。ただし、実際にはジョブすなわち「職務」が限定されている場合が多い。

どのくらいの企業がジョブ型正社員を導入しているか。厚生労働省の資料によると、全体の35.5%の企業がなんらかの限定区分をもつ働き方を採用している。従業員1000人以上の大企業に限ると、62.2%に達している(2015年7月時点、回答は計4854社)。

会議がヒアリングした東京急行電鉄は2011年から「事業特化型特定職」という制度を導入した。鉄道事業のアテンダント、不動産だと店舗コンシェルジュ、旅行代理店ならカウンター業務、情報処理ではWEB制作を専門にする職種だ。有期雇用者から登用し、いま74人を数える。

三井住友海上火災は2015年度から、1年更新のスタッフ社員と地域限定社員の間を埋める「キャリアエキスパート職」を導入した。無期雇用で60歳定年だが、勤務地と職務(保険申込書の点検など)を限定した社員だ。120人がスタッフ社員から試験選抜で登用された。

フィットネスクラブなどを運営するルネサンスは勤務地の限定がないグローバル社員のほかに、全国を4つに分けて勤務地を限定したエリア社員があり、昨年7月からは基本的に転勤がないホーム社員(35人)も導入した。

いずれも「専門を活かして働きたい」「産休や育休、介護などで転勤を避けたい」など働く側の要望と「スキルの安定した人材を長期的に確保したい」「仕事へのモチベーションを高めたい」といった会社側のニーズがジョブ型正社員導入の背景にある。

 

問題は職務や勤務地が限定されているのに、それが就業規則や労働契約で明文化されていないケースが多い点だ。厚労省の研究会報告書によれば、職務限定の場合は約5割、勤務地限定の場合では約7割の企業が限定した働き方の中身を明文化していなかった。

ジョブ型正社員として働く側にとっては、どういう場所でどんな仕事をするのか、を労働契約前に明文化してもらうのは当然だろう。

入社した後になって、たとえば「あなたの仕事はなくなった。解雇します」とか、「明日からここに異動して」と言われて移ったら実は解雇部屋だったという場合にどうするか。契約内容が明文化されておらず、あいまいだったら、とても戦えない。本人が納得もできないだろう。

そこで規制改革推進会議は前身の会議からジョブ型正社員の労働条件や無限定社員(普通の正社員)との相互転換について、法的枠組みを含めて新たにルールを作るように提言してきた。もっとも望ましいのは、強制力を伴う法改正である。

以上のような問題意識から、規制改革推進会議は日本経団連、日本労働組合総連合会(連合)、厚生労働省労働基準局の担当者と、有識者として日本大学総合科学研究所の安藤至大准教授を招いて公開ディスカッションを開いた。私は司会進行を務めた。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら