教育 子育て

「ママ、出てくわよ」子育て中の脅し文句が子どもに与えるコワイ影響

世代間連鎖を防ぐ子育て論(2)
信田 さよ子 プロフィール

冷静に考えればひどい言葉なんですが、こんなにやさしく言ってるのにどうしてわからないのか腹が立ってくるし、ケンタが私を困らせようとしてわざとやってるんじゃないかと思えるんです。

にらみつけると、ケンタは知らん顔をして、もっとひどくなります。反省した様子もないんです。こうやってケンタのほうが私を無視するんです。

ふざけるんじゃないとむかついて、思わずぽかりと頭を叩いてしまうと、こんどは「ワーン」と泣き出してしまいます。

そんなふうにケンタを叩いてしまった自分がいやになって、やっぱり私は子育てが下手なんだ、と落ち込んでしまうのですが、私にかまわず泣いているケンタを見るともっと腹が立ってきます。泣かれると私のほうがパニックになってしまいます。

「静かにしてよ!」
「みんなに聞こえたらどうするのよ!」

叩いたことで自己嫌悪に陥っている私の気持ちもわからないで大声で泣くなんて、卑怯じゃないですか。泣けばいい、泣けばすべて許されるわけじゃありません。

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私が小さい頃は、泣いてもわめいても母親から無視され続けたものです。どんなにあやまっても、ごはんをうまく食べられなかったり、おかずをこぼしたりするだけでひどく叩かれたり、にらまれたりしました。何の説明もされませんでした。

そんなときの母親の顔が怖くて、わけがわからないままに言うことをきいていました。

なのに、ケンタは私からていねいに理由も説明してもらえます。散歩にだって連れて行ってもらえます。それなのに大声で泣くなんて、おかしいでしょう。

泣けば許してもらえると思ったら大間違い、ママなんか泣くこともできなかったのに、泣けるなんてぜいたくじゃないの。ケンタを叩きながら、叩かれるのはあんたが悪いんでしょ、といつのまにか大声で叫んでいるのです。

こんな私はヘンでしょうか。どう考えたらいいんでしょうか。

ケンタのことが憎らしいわけではありません。私にとってはかけがえのない存在です。ただ言うことをきいてくれればいいだけなんです。

 

「あんたはいいよね、私なんか」と言う親

マユミさんの語った内容には、いくつかの大切なポイントが詰まっています。

しかし何より先に、夫のギャンブルの問題を抱えているにもかかわらず、毎日育児をがんばっている自分に対して合格点をつけてあげることでしょう。

マンションで元気なケンタ君と毎日いっしょにいるのはとても大変なことです。特に高層マンションの場合、外に出るためにエレベーターに乗らなければなりませんし、セキュリティの強化もあり、子どもの自由がどうしても制約されてしまいます。半日がかりで大きな公園に出かける習慣は、とても大切なことだと思います。

さて、マユミさんの話の中で、一番重要な部分は、「私は親からそんなことしてもらったこともないのに、あんたは私という親からいい思いをさせてもらってるじゃないか」という告白です。