Photo by iStock
週刊現代
『女性の品格』著者・坂東眞理子が選ぶ「人生最高の10冊」

一大ブームとなった『女性の品格』を執筆した評論家の坂東眞理子さん。10代から無類の本好きだと言う坂東さんに、人生で最高の本、10冊を選んでもらった。

負けても生きる価値はある

今でもそうですが、特に10代の頃は、読書ばかりしていました。

実家の母は蔵書家でしたし、戦死した叔父の本も山のようにあった。ただ、少し難しくて、堅い本が多かったんです。だからその頃、私が一番愛読したのは、貸本屋で借りた山中峯太郎の血沸き肉躍る『敵中横断三百里』や、山手樹一郎、柴田錬三郎の時代小説、また『鉄腕アトム』や『少年王者』が連載されていた雑誌など、あまりマジメではないものが多かった。1泊2日10円で借りて、夢中で読みましたね。

私は中国の歴史が好き。1位に挙げた『史記』は今でも時々読み返す愛読書です。

この作品は前漢の武帝時代に司馬遷によって編纂された歴史書。武帝の怒りを買って、司馬遷は宮刑(去勢する刑罰)に処せられてしまいますがそのことがものすごくコンプレックスになります。それでも屈辱を糧にこれだけ立派な歴史書を書いたわけです。

彼は勝者ではなく敗者を描くのが好きで、それは最終章、「列伝」で取り上げられている多彩な人たちの生き様を見てもわかります。

いくら正義感があり、徳の高い人物でも人生では負けることのほうが多い、それでもなお生きる価値はある。司馬遷はこの本で、歴史の原動力とともに、人が生きる上での原動力を伝えようとしています。

そして2位は『万葉集』。万葉集から約400首を厳選した斎藤茂吉の『万葉秀歌』が入り口でした。わかりやすい解説が書かれていて、素人には読みやすかった。

万葉集

一番好きな歌は、笠郎女の『君に恋い 甚も術なみ平山の 小松が下に立ち嘆くかも』です。恋い慕う大伴家持に遠くから、ただ立ち尽くすことしかできない詠み手の切なさが胸に染みました。

3位は『ローマ人の物語』。塩野さんの作品は『ルネサンスの女たち』、『海の都の物語』など、ほとんど読んでいます。『ローマ人の物語』は、古代ローマ全史を描いたスケールの大きな作品で、彼女の代表作。登場している英雄たちはシーザーを始め皆魅力的で読み応えがあります。

ローマ人の物語
 

どんなときでも本に手が伸びる

一方で、根拠のない断定や重大な事実の誤りがあるなど、歴史書として読まれることに批判的な専門家もいます。けれど、塩野さんの目を通して、ピックアップされているローマの歴史には、意外にその時代の本質があるのではないかと私は思っています。

4位の『源氏物語』は様々な方が訳していますが、私が一番最初に読んだのは母が持っていた与謝野晶子翻訳のものでしたね。

源氏物語

『源氏物語』には、いろんな女性たちが登場していますが、私が一番好きなのは六条御息所です。能の「葵上」、梅原猛の『地獄の思想』でも題材にされていますが、六条御息所は光源氏に恋い焦がれながらも、叶わずに生霊となります。

そして、恋敵に取り憑いて殺してしまう。激しくて、怖い女性なんですけど、なぜかその強さに惹かれてしまうんですよね。