Photo by iStock
社会保障・雇用・労働 週刊現代
格差をなくせ!苦しむ労働者とともに闘った「伝説の男」の壮絶人生
いまや正社員すら守れていないのだから

労働組合のオルガナイザーとして、企業の労使交渉に半生を捧げた「伝説の労働運動家」二宮誠さんが綴った『「オルグ」の鬼』。本インタビューで著者自身が経験した一筋縄ではいかない交渉のエピソードを語ってもらった。

目尻から血がツーッと

―UAゼンセン(旧・全国繊維産業労働組合同盟)で専従「オルガナイザー」を務めていた二宮さん。組合を持たない会社の従業員に組合の作り方を伝授し、経営陣と交渉する「プロの労働運動家」として経験した数々の修羅場が、『「オルグ」の鬼』には描かれています。

「労働組合って、自然に生まれるものでしょう」と思っている人も多いと思いますが、労働組合の作り方を知っている「プロ」のオルガナイザーがいなければ組合は生まれません。私はその組織化に携わってきました。

日本の組合は世界でも珍しく、企業別組合が主流です。欧米では、産業別、職業別の組合が多いのですが、日本では企業別組合ゆえの独特な病が進行しています。それは、自分たちの会社の正社員しか守ろうとせず、契約社員や下請けの労働条件には無頓着で、「内向き」な組合活動です。そうした状況をなんとかしたいという思いで、活動を続けてきました。

ゼンセンに入った当初は、愛知、鹿児島、福井などの支部で働きました。愛知や福井は繊維業がさかんな土地柄で、たくさん労働組合の団体交渉に出向きましたね。

ある時、賃上げの交渉のための極秘のストライキ計画が業界紙にすっぱ抜かれ、会社側に事前に漏れたことがありました。驚いた経営陣とすぐ交渉の場を設けましたが、相手は苛立ちを隠さず、記事が載った新聞を投げつけてきました。

こちらも負けてられないと、すぐに投げ返したところ、目の前の一人の眼鏡に直撃して、レンズが割れてしまったんです。目尻から血がツーッと流れた。その場で交渉は決裂。即ストを決行し、結果として賃上げを勝ち取りました。こうした激しいやりとりも少なくなかった。

 

―そんな戦いを続ける中で、厳しい交渉も、「二宮ならやってくれるだろう」と思われるようになったそうですね。

そうですね。その交渉後も、愛知のいくつかの会社の賃上げが要求レベルに達していなかったことがあって、そうした会社のひとつの工場に乗り込んでいきました。

その時、もののはずみで工場の電源を切ったんです。そしたら、大きな爆発音が鳴り響いてしまった。経営者が「警察を呼ぶぞ」と言うので「どうぞ呼んでくれ」と、一悶着ありました。まぁ、結果的には賃上げ幅は要求どおりにさせました。

そんな喧嘩腰のやり方がゼンセン本部でやり玉にあがったそうなのですが、当時の会長だった宇佐美忠信さんには「二宮のやったことは評価する」と言ってもらえました。嬉しかったですね。