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医療・健康・食

ルームランナーはもともとイギリスの拷問器具だった!

産業の動力源に使われた囚人たち

囚人を動力源に使おう

日頃の飲酒や脂っこい食生活で、最近どうも腹回りが……。そんな人がジムに行くと、まずやってみるトレーニング器具の定番中の定番、ルームランナー。

スイッチ一つ押せば、スペースがなくても、天気が悪くても、室内で好きなだけ走ることができる機能は、ダイエット中の主婦から、一流アスリートまで、身体を絞りたい人にとって大きな味方だ。

ルームランナーは和製英語。英語では「トレッドミル」といい、「踏み車」という意味だ。その起源は19世紀のイギリスまでさかのぼる。

当時、キュビットというエンジニアがある刑務所を訪れると、大勢の囚人がところどころで、所在なく過ごしていることに気がついた。そのとき彼は、「この囚人たちを産業の動力源に使おう」と閃いたという。そして、囚人たちが複数人で巨大な外輪を踏んで回す、踏み車を発明することとなったのだ。

囚人たちは踏み板に足をかけて輪を回すのだが、踏み車には傾斜があったためこの作業は行き着く果てのない梯子を昇るようなものだったという。

15分も踏むと多くの囚人たちは精根尽き果てたが、それでも1日6時間の踏み車を課せられ、作業は過酷を極めた。そのエネルギーは水をくみ上げたり、穀物を砕いたり、風車を回す動力として使われたと言われる。

 

踏み車はその残虐性により、発明から10年が経った頃には、理想的な拷問器具としてイギリス各所に導入されるようになる。

さらに、1865年に制定された監獄法によると、16歳以上の囚人は最初の3ヵ月、踏み車作業に従事しなければならないとされ、一気に普及していった。

監獄法が廃止された20世紀以降は、この踏み車も廃止されたが、後にその機能を応用した電動ランニングマシンが1953年に健康器具として発売され、現代まで大いに人気を博している。

懲罰としてルームランナーをさせられていたかつての囚人たち。運動不足もすっきり解消して健康体で出所していったとすれば皮肉な話だが。(井)

週刊現代』2017年5月6・13日号より