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野球
なぜ菊池涼介ほどの名手が、アメリカの天然芝に苦戦したのか
敗因にこそ、ドラマがある

球はグラブを弾いて…

2大会ぶり3回目の「世界一」を目指した第4回WBC。野球日本代表(侍ジャパン)は準決勝で米国に1対2と惜敗し、前回に続いて決勝に進むことができなかった。

4回目の出場にして初めて決勝に進出した地元の米国は、その余勢を駆って初優勝を果たした。

日本の敗因は守備の乱れだった。3月21日(現地時間)、ドジャースタジアムでの米国戦。0対0で迎えた四回表の攻防が明暗を分けた。日本の先発は菅野智之(巨人)。決勝ラウンドでの投手の球数制限は95球だが、菅野は「(球数を)意識せず0点に抑える。それだけが目標です」とのコメントを残してマウンドに上がった。

立ち上がりは上々だった。メジャーリーグを代表するバッターたちを相手に、一回、二回とひとりの出塁も許さなかった。この時期にしては珍しく雨中でのゲームとなったが、指に適度な湿り気を与えているようにも見えた。それが証拠にここまで制球を乱す場面は、ほとんどなかった。

そして迎えた四回、まず先頭の二番アダム・ジョーンズ(オリオールズ)を高めのストレートで三振に仕留めた。先頭打者を打ち取るのは、重要なゲームを制する上での鉄則だ。

 

続くバッターは三番クリスチャン・イエリッチ(マーリンズ)。母方の祖父が日本人という日系三世だ。昨シーズン、21本塁打を放ってブレークした左打者は、カウント2-2からの五球目のカーブを強引に引っかけた。菅野にすれば注文どおりである。打球はセカンドのほぼ正面に飛んだ。

日本のセカンドは名手・菊池涼介(広島)。2014年につくった補殺数535は、今でもセカンドの日本記録だ。ゴールデングラブには4年連続で選ばれている。

グラウンドにいる日本人選手のみならず、ベンチも含めた誰もが「これでツーアウト」と思ったことだろう。打球がセカンド方向に飛んだ時点で菊池は捕球態勢に入っていた。強い打球ではあったが、菊池の守備力を考えれば、何かが起きるようには思われなかった。

ところが、である。定位置より後ろの天然芝の部分で構えていた菊池のグラブを強い打球がはじいた。雨に濡れた天然芝が打球に微妙な変化を与えたように映った。

最悪、正面にこぼしていれば、「一死一塁」ですんだ。だが運の悪いことにはじいた打球はセンター方向にまで転がった。俊足のイエリッチが、これを見逃すはずがない。「二死」のはずが「一死二塁」となり、米国は先制のチャンスを迎えた。

菅野は昨シーズン二冠王(本塁打、打点)の四番ノーラン・アレナド(ロッキーズ)を三振に仕留め二死までこぎつけたが、五番エリック・ホズマー(ロイヤルズ)に、このゲーム初めての四球を与え、二死一、二塁。続く六番アンドリュー・マカチェン(パイレーツ)に三遊間を破られ、日本は先制を許した。

ドジャースタジアムへの「疑い」

それにしても菊池ほどの名手が、なぜ……。東京ドームでの一次ラウンド、二次ラウンド、チームに勢いを与えたのは間違いなく菊池の守備力だった。

まずは初戦のキューバ戦。先発の石川歩(千葉ロッテ)は、無死一、二塁といきなり2人のランナーを背負った。打席には三番のフレデリク・セペダ。巨人でもプレーしたことのある強打者だ。

セペダは外角高めのシンカーを、強引に引っ張った。一、二塁間を抜けるかと思われた打球の先には“忍者”がいた。スライディングしてボールをグラブに収めるや、素早く体を反転させて二塁送球。4-6-3の併殺を成立させてピンチをしのいだのである。

もしセペダの打球が抜けていれば大量点につながる恐れがあった。石川に立ち直りのきっかけを与える値千金のプレーだった。

二次ラウンド初戦のオランダ戦でも菊池がチームを救った。6対5で迎えた七回裏、一死一塁で三番ザンダー・ボガーツ(レッドソックス)の打球はピッチャー松井裕樹(楽天)の足元を襲い、センター前に転がろうとしていた。