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野球 ライフ 週刊現代

屈辱のオリックスナイン「宮内オーナーのひと言」が闘志に火をつけた

「言われっぱなしじゃ終われない」

プロ野球選手は誰もがプライドを持つ。負け続けて隠れていた意地が、球団首脳のゲキによって刺激されて、闘争心に一変する。戦力ダウン必至とみられたオリックスが生まれ変わろうとしている。

絶対に見返してやる

焼き肉をつつく箸の手が一瞬、止まった。本来は美味しいはずの肉の味がしない……。

2月11日、オリックス・バファローズの球団オーナー、宮内義彦(81歳)が、宮崎キャンプ中のナインを激励に訪れた時のことだ。

数年前までは、選手が練習するそばでキャッチボールをした野球愛の持ち主は、同じテーブルを囲んだ福良淳一監督、今年から選手会長に就任したT-岡田やエース金子千尋、守護神の平野佳寿の顔を見るや、思わず言葉に熱がこもった。

「勝て、勝て、とにかく勝て!」

大型補強を施されながら最下位に沈んだチームの主力たちが、うつむきがちになるのも、仕方がないことだった。翌12日には宮崎・清武キャンプでユニフォーム姿の選手や監督、コーチたちの前で約5分間、チームに「公開説教」。宮内オーナーはこう言い放った。

「キャンプは順調だと聞きました。昨年日本一の日本ハムが順調ならもう一回優勝できるけど、最下位のウチが順調ではまた今年も最下位になる。順調ではいかんのです。クレイジーなキャンプをやらないといかん。目の色を変えるぐらいのね」

まだ日本には根付いていなかったリース業の将来性を見抜いて一代で大企業へと成長させ、日々、数字を追って成果を求めてきた辣腕経営者。そんな宮内にとって、昨季の一、二軍ともに最下位、オープン戦、交流戦もすべて最下位、という結果はお話にもならないものだ。

野球も、ビジネスも、勝利を求めて「狂う」まで追い込むことは、宮内にとっては自然なことだったが、オーナーに公の場でそんな「説教」をされるのは、選手にとってはプロとして屈辱以外の何物でもなかった。オリックス担当記者が明かす。

「ことあるごとにチームを酷評する宮内オーナーの発言に対し、敏感に反応するのは球団フロントや監督、コーチ陣です。これまで選手はあまり関心がなかった。なぜなら、オーナーが、試合で選手を起用するわけではないからです」

だが、今年は違った。選手会長のT-岡田は、報道陣にはっきりとこう言ったという。

「僕は絶対に見返してやろうと思う。いろいろ言われない成績を残したい」

大阪・履正社高出身のT-岡田は2年連続トリプルスリーを達成したヤクルト・山田哲人の5年先輩にあたる。プロ12年目の29歳。左の大砲として1年目から毎年期待されてきたが、個人タイトルをとれたのは5年目の2010年の本塁打王(33本)のみ。

昨季も123試合に出場、打率・284、本塁打20本の成績を残しているが、日本一になった日本ハムの中田翔と比較すると、影の薄さは否めない。

「T-岡田はもともと甘えん坊で、みんなを引っ張っていこうというよりは、先輩の背中にくっついて歩くタイプです。自分が是が非でも、と前に出て引っ張る性格ではないんです。昨季の打点が中田は110に対し、T-岡田が76。勝負弱さが印象の薄さにつながっている。

ただ今年から選手会長になって、今までの自分から脱皮しようと必死にもがいています。まず練習中に自分から声を出すようになりましたし、若い選手に対して時には苦言を言ったり、逆に激励するときもある。

オーナーの言葉にT-岡田が反応したのは、それだけチームを代表している意識が強く、『とにかくこのチームで勝ちたい』と勝利に飢えている証だと思います」

 

エースは俺だ

だが、そうして迎えた3月31日の開幕戦は楽天戦に延長で惜敗。すると、「疲れた。負けは負け。惜しい負けなんかない。毎日勝っていかないと。結果がすべて。(守備が乱れた三回について)あの守備は何ですか。あの回、記録にならないボーンヘッドを含めていくつエラーがあったか」とまた宮内オーナーの苦言がスポーツ紙に載った。

2戦目も4-13と大敗し、3戦目も八回までリードを奪いながら、それを守り切れずに敗れ、開幕3連敗──。

今年もまた同じか、とファンは思ったが、ナインは違った。

「オレたちは言われっぱなしでは終わらない」