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野球 ライフ 週刊現代
元巨人・前田幸長が語る「プロで通用する中学生」の見抜き方
野球選手の人生は13歳で決まる(3)

中学時代に速い球を投げるからといって、プロになれるわけではない。逆に、身体が小さくても「プロに行ける」と期待される子がいる。恵まれない体格で19年、プロでやった男だからわかることがある。

キャッチボールでわかる

野球の素質は数字だけでは計り知れない。この連載に登場した大阪桐蔭高校2年の二刀流・根尾昂は直球の最高速度148km、東邦高校1年の即戦力内野手・石川昂弥は身の丈185cmという人並み外れた数字が、彼らの持つスケールの大きさを示している。

が、いかに身体が大きくても球が速くても、力を発揮できないまま、野球をやめてしまう子供も多いのだ。

神奈川県下のボーイズリーグの強豪・都筑中央ボーイズの会長を務める前田幸長はかつて、福岡第一高のエースとして甲子園で活躍し、1988年にドラフト1位でロッテに入団した元プロの投手である。

技巧派の左腕として知られ、179cm、70kgの細身の身体、140km台前半しかない球速で、19年間もプロの世界で生きてきた。その前田が、決して大成できない中学生の例を挙げる。

「えいやっ、と力任せに速い球を投げる子がウチにきて、投手をやらせてほしいと言われることがよくあるんです。でも、そういう子に限って投手としての伸びしろがほとんどない。実際に投げる姿を見ると、いくら速くても投手では通用しないとわかります。

そんな子の親御さんにははっきり言いますよ。この子には投手は無理です、ウチで野球をやるのなら野手になってください、と」

もちろん、それが不満で別のチームに行く子供もいる。が、そんな子が大活躍しているという話はほとんど聞かないそうだ。前田は子供のどこを見て、伸びしろの有無を判断するのだろうか。

「マウンドで投げさせたときの雰囲気、キャッチボールをしているときの身のこなし、そんな身体の使い方すべてを含めたセンスです。いい投手になれる素質があるかどうかは、そんな数字に表れない部分に出る。

ここをこうすればもっと制球がよくなる、もっと球速も出るという成長の可能性が感じられるかどうかが一番重要なんです。球が速いとか、身体が大きいとか、そんな目に見えることじゃなくて、ね」

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前田の下で監督をしている都築克幸は今春選抜に出場した日大三高出身で、1番打者として2001年夏の甲子園で優勝している。プロ入りした中日では一度も一軍に昇格できずに終わり、自分の素質の限界を身を以て実感した人間でもある。その都築が、自分の経験から指摘する。

「センスがあるかないかは、小学生でもキャッチボールとバットスイングを見れば大体わかりますね。プロに行けるかまではともかくとして、強豪高校でやれるようになるかどうかぐらいは。

小学生のキャッチボールってあとから教えられた技術じゃなく、生まれつきの素質でやってるでしょ。メチャクチャな子は本当にメチャクチャだけど、逆にセンスのいい子だったらすぐわかるんです」

 

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そういう都築や前田のチームでエースとなった高松屋翔音は、川崎市立東橘中学3年の左腕投手である。178cm、65kgとほっそりしていて、真っ直ぐのスピードも120km程度しかない。

それでも前田は、「甲子園で勝てるし、プロにも行けます」と太鼓判を捺す。私が高松屋の投球を見に練習場へ足を運んだときも、ある高校の指導者が視察に来ていて、秘かに注目される存在になっていることがうかがえた。

セットポジションから右膝をクイッと胸につくほど上げ、テークバックの小さなフォームで真っ直ぐを投げ込む。捕手のミットに収まる前、微妙に変化しているようにも見えた。大きなカーブ、縦に変化するスライダーもあり、ほとんどの球がストライクゾーンにしっかりと収まっている。

じっくり視察していた高校の関係者も言った。

「面白いですね。打者がタイミングを取りづらい感じで、コントロールもなかなか安定している」