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芦毛の怪物「オグリキャップ」その栄光と挫折、そして復活を語る
不世出のスーパーホース

昭和から平成にうつりかわる時期に突如として現れた不世出のサラブレッド。栄光、挫折、そして復活。一番強かったわけじゃない。でも皆オグリが好きだった。

おぐりきゃっぷ/競走馬。父はダンシングキャップ、母はホワイトナルビー。地方競馬出身ながら中央競馬で快進撃を続け、当時のバブル景気との相乗効果で競馬ブームを引き起こす。「芦毛の怪物」、「野武士」などの異名を持つ

競馬ブームに火をつけた

瀬戸口勉(元調教師) オグリと初めて会った日のことは、今でもはっきりと覚えています。目元がパッチリしていて、「なんて賢そうな顔をしているんだろう」って。

大川和彦(元アナウンサー) 同じく地方から中央に来て大活躍し、'70年代に社会現象となったハイセイコーは鹿毛の大きな馬でいかにもたくましい感じ。芦毛のオグリはちょっとネズミみたいな雰囲気で愛嬌があった。

カンニング竹山 だから女性にも大人気。競走馬のマスコット人形が作られるようになったのはオグリからでしたね。

大川 オグリが登場した'88年にJRAの馬券売り上げは2兆円を突破しましたが、1兆円から2兆円を超えるまでに11年掛かっています。

ところが、オグリブームで競馬人気に火がついてそこからたった2年で3兆円を超えた。ファン層がどんどん若返り、オグリキャップを中心に競馬が盛り上がった時代でした。

竹山 良血で走る馬はたくさんいます。でも、オグリはそれほど期待された馬じゃないし、血統だって決して一流とは言えません。そういう馬が地方から上がってきてエリートたちを次々と負かしていく姿にファンは惹かれたのでしょうね。

瀬戸口 私もオグリは自分の厩舎の馬というよりもファンの馬だと感じていたので、どのレースもファンの期待に応えられるように仕上げてレースに臨みました。

竹山 オグリは地方で12戦10勝の戦績を残して、鳴り物入りで中央競馬に移籍します。

瀬戸口 正直、地方と中央ではやはりレベルの差がある。私の厩舎に入厩してからも、本当に走るかどうかは半信半疑だったんですが中央デビュー戦となった、ペガサスステークスで「この馬は走る」と確信しました。

大川 最後の直線であっという間に突き抜けて2着を3馬身ちぎっちゃった。実況した杉本(清)さんが「これは噂に違わぬ強さであります」とコメントしましたが、私もあのレースを見て驚いた。

私が初めてオグリのレースの実況を担当したのは移籍4戦目のニュージーランドトロフィー4歳ステークス。このレースでは鞍上の河内(洋)騎手が一発もムチを使わず、何もしないで回ってきただけなのに、2着に7馬身差もつけちゃった。ホント、怪物ですよ。

 

レース前の武者震い

竹山 その後も連勝街道を突き進み、初のGIである秋の天皇賞に挑戦。いよいよ宿敵タマモクロスと激突します。オグリより一つ上の旧5歳馬だったタマモクロスは、春の天皇賞と宝塚記念を連勝して現役最強馬でした。

大川 タマモクロスもオグリと同じ芦毛馬。このレースでは「芦毛対決」と騒がれましたが、1番人気に推されたのはオグリのほうでした。

瀬戸口 私も「負けるわけにはいかない」という思いでレースに臨みました。でも、タマモクロスも本当に強い。あのレースは展開も向かずに、敗れました。