〔PHOTO〕iStock
ブルーバックス 生物
ダ・ヴィンチが嫉妬するかもしれない、人体の精妙さと美しさを知る本
新しい人体の教科書

「ダ・ヴィンチは、きっとこんな書物を求めていたはずだ。彼の時代から500年。人体とは、構造と機能が完璧なまでに一致した、進化のはての美しい達成であることが今ここに示される」

いち早く『カラー図解 新しい人体の教科書』を読んだ生物学者の福岡伸一氏は、こう大絶賛する。基礎の基礎からわかりやすく解説した1冊がここに誕生。

私たちのからだは巧いことできている

からだ――誰もがひとつだけ持っているかけがえのないもの。はち切れんばかりに生気をみなぎらせて、地上を闊歩する若者たちには、全くといっていいほど頓着がない。

しかし、年齢を重ねるにともない、あちこちに異常や障害が発生してくると、いやがうえにもからだへの関心は高まってくる。高齢化間題の一面は「からだ間題」でもある。

誰もが健康で長生きしたいと願う。そんな願望をくすぐるかのように、テレビをはじめ多くのメディアは、病気や腱康、食品の安全や安心に関する情報であふれかえっている。その効果なのか、建康食品やサプリメントが飛ぶように売れている。

しかし、自分の健康を護るのは自分を措いてない。となれば、わたしたちは自分のからだについて、もっと関心を高め、もう一度基本に立ちかえって自分の目でじっくりと眺め直してみてはどうだろうか。本書『新しい人体の教科書』を執筆した最大の動機がここにある。

翻って、人体といえば、おどろおどろして、奇異な言葉が飛び交いしち面倒くさそうだ。ましてや“解剖”などといえば、このたったふたつの漢字を見ただけで、気分が悪くなってしまう。“生理学”という文字にも名状しがたい不潔感を覚える。そんな方々も多いだろう。

でもここで、食わず嫌いをちょっとだけ我慢して「自分のからだの話だから」と思って読みはじめてみては如何だろうか。

そうすれば、時にはなるほどと肯き、また時にははてなと疑間が生まれ、そして最後には、さすがに自分のからだは巧いことできている、と感嘆するに違いない。

かくして、自分のからだを大事にしなければと思うと同時に、これまでとは全く異なった人体観を持っていただけるはずだ。

 

何種もの分子が天文学的な数だけ集まって、細胞膜やミトコンドリアなど、細胞を構成するすべての要素を作り上げ、その集団として1個の細胞がある。

さらには、類似の細胞がおびただしい数だけ集まって組織を作り上げ、組織の集合体として肝臓や心臓といった器官がある。器官が集合して器官系となり、そのまとまったものが個体というわけだ。

このように、一段ずつ階段を昇りつめていく造化の妙は、生命体構築の階層性とよばれる。

地球の歴史とともにはじまった生命の歴史は、この階段を着実に昇り詰めてきた歩みでもあり、わたしたちひとりひとりは、地球46億年の歴史を背負って生きているといっても過言ではない。地球が宇宙の一員なら、地球の上に生きる生命体もまた宇宙の一員である。

というわけで、地球の属する宇宙は「大宇宙」、生命体の中に展開されるミクロの彼方にまで広がる世界は「小宇宙」とよばれる。

これから本書を読み進めていくことは小宇宙の探検への出発である。小宇宙探検のガイドブックである本書を教科書と銘打ったのは、基本を忠実に考えていただきたいと念願したからである。

そのために、いくつもの特徴を持たせることとした。