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トルコの国民投票結果がドイツにもたらした「二重のショック」
敵の味方は実は「ドイツ人」だった?

EUを戸惑わせる投票結果

4月16日、トルコで国民投票があり、トルコの大統領権限の強化が過半数で承認された。エルドアン大統領が精魂傾けていた懸案だ。

ドイツでは、エルドアン大統領は「独裁者」ということで、蛇蝎のごとく憎まれている。最近は、ドイツ−トルコ政府間の関係もよくない。ところが今回の投票では、さしあたってエルドアン大統領の権限強化が決定したわけで、以来、ドイツメディアは上を下への大騒ぎになっている。

国民投票の翌日、ドイツの国営放送第1テレビのメインニュースでは、「皆さん、今晩は」のあと、やおら、「トルコの憲法改正をめぐる国民投票でのエルドアン大統領のギリギリの勝利のあと、国際選挙監視団は、それについて批判的な意見を発しました」と報道した。国営放送第2テレビも同様で、まさに批判一色だ。

ドイツ内相も不正の徹底追及を求めており、トランプ米大統領とプーチン露大統領が、エルドアン大統領に祝辞を送ったのとはえらい違い。ちなみに私は、不正があったなら、これほどギリギリの結果にはならなかったのではないかと思っている。

19日、野党が提出していた投票結果の無効化は却下された。

 

とはいえ、エルドアン氏が行おうとしている憲法改正が危ういものであることは間違いない。現在のトルコは議院内閣制だが、憲法改正後は大統領に権力が集中し、立法にも司法にも介入できるようになる。つまり、三権分立が骨抜きになる可能性大。そんなトルコとEU加盟交渉を進めているEUは、今、かなり戸惑っている。

一方、今回のトルコの国民投票は、ドイツに違った意味でも大きなショックをたらした。

エルドアン大統領の支持者は、トルコの田舎に多い。つまり今回の改憲案も、伝統を重んじる田舎の「イエス」票で力強く支えられた。イスタンブール、アンカラ、イズミールの3大都市は進歩的であるため、反エルドアン色が強く、軒並み「ノー」票が上回った。

ところが、4番目に大きいトルコ人の票田では、エルドアンの明確な勝利となった。それはどこか? 実は、ドイツなのである。

選挙結果に沸くベルリンのトルコ人たち〔PHOTO〕gettyimages

在独トルコ移民たちの言い分

ドイツには、トルコ系の人が300万人住んでおり、うち145万人がトルコでの参政権を持っている。今回投票したのはその約半分の70万人だったというが、そのうちの63%がエルドアン大統領に「イエス」票を投じた。

トルコでの「イエス」票は51.4%だったから、ドイツでのエルドアン支持率は、トルコ本国以上ということになる。

それがわかった途端、ドイツでは、この明確な「イエス」についての議論が爆発した。

ドイツ人は、自分たちがトルコ移民に民主主義の洗礼を施したと思っている。なのに、その彼らが独裁者エルドアンを支持したのだ。ドイツ人にしてみれば、これほど不愉快な事はない。

しかも「イエス」票を投じたのは、下層階級で失業している人たちばかりでなく、ドイツに何十年も住み、あるいは、ドイツで生まれ、ドイツの教育を受け、ドイツ社会で確固たる地位を獲得しているエリートたちも同様なのだ。おまけに、彼らの多くはドイツ国籍も持っている。つまり、ドイツの選挙でも投票できるのである。