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中国 アメリカ 北朝鮮

まるで「兵糧攻め」長期化する北朝鮮情勢でアメリカが打つ次の一手

鍵を握る中国は「制裁」を決断できるか

原油を止めれば北は終わる

米国と北朝鮮のにらみ合いは長期戦になるのではないか。鍵を握るのは中国だ。中国が北朝鮮に原油供給停止を含む制裁に踏み切るかどうか。そこを見極めるまで、トランプ大統領は動かないだろう。

いまの情勢は、戦国時代の「城攻め」に似ている。

北朝鮮の金正恩・最高指導者は防御を固めた城に立てこもる一方、米国は圧倒的な軍事力で城を包囲しつつある。「兵糧攻め」というように、城に立てこもった側は武器弾薬と食料の補給が決定的な弱点になる。弾とメシがなければ戦えない。

いま北朝鮮にとって「弾とメシ」に直結するのは原油だ。北朝鮮は原油の9割を中国からの輸入に依存している。だからトランプ大統領は先の米中首脳会談で中国の習近平国家主席に対して、北朝鮮への原油供給停止を要求した。

中国が応じなければ、米国は北朝鮮だけでなく、中国も経済制裁する構えだ。具体的には、北朝鮮と取引がある中国の銀行や企業に対して米国が取引停止などの制裁を課す。たとえば銀行の外国為替業務が事実上、ストップすれば、中国には打撃になる。

逆にもしも中国が要求に応じれば、北朝鮮は戦争どころではなくなってしまう。戦おうにも戦闘機は飛ばせず、戦車も動かせなくなる。もちろん経済もマヒする。原油供給停止の影響は、先に中国が決めた北朝鮮からの石炭輸入停止の比ではない。体制そのものを揺るがすだろう。

中国は米国と足並みをそろえ、究極的には金正恩体制の崩壊も視野に入れるのか、それとも金正恩指導者の後ろ盾であり続けるのか、という二者択一の選択を迫られた形なのだ。

 

4月6、7日の米中首脳会談でトランプ大統領は習主席に要求を突きつけた後、期限を区切って返答を待っていたに違いない。返答期限なしの要求だったら、事実上「答えなくてもいい」と言ったも同然になってしまう。それでは要求にならない。

12日になって習主席は大統領に電話した。ところが、その返事は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51474)で紹介したように「北朝鮮問題は平和的解決を望む」「シリア問題は国連安全保障理事会の結束が重要」という大ボケの内容だった。

大統領とすれば、そんな程度の話だったら、いまさら聞くまでもない。

その後、トランプ政権は中国の為替操作国認定を見送った。大統領自らツイッターで「北朝鮮問題で協力する中国を為替操作国とは呼べない」と発信している。これは、もちろん中国の北朝鮮制裁を期待した、懸命なラブコールである。

言い換えれば「平和的解決などと寝言を言ってないで、さっさと原油供給を停止しろ」と習主席を攻め立てているのだ。

習近平Photo by GettyImages

はたして、習主席は制裁を決断できるか。ここが目下の焦点だ。私は、ほとんど期待していない。先週のコラムで書いたように、習主席は決断力、判断力に乏しい。国内の政治闘争に習熟していても、国際関係の舵取りにはほとんど経験がない。

米国との関係で言えば、2013年6月の初訪米で当時のオバマ大統領に言ったのは「太平洋の縄張り分割」提案だった(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49175)。主席は「太平洋は米中両国を受け入れるのに十分に広い」と言ったが、裏を返せば「太平洋は十分に広いから、米中両国で縄張りを分け合おう」という意味だった。

ところが、オバマ大統領に「日本は米国の同盟国であるのを忘れるな」と言い返されて、すごすごと引き返してしまった。かと思うと、半年後に東シナ海の上空に突如として防空識別圏を設定した。これも米国がB52戦略爆撃機を飛ばして無視すると、次は舞台を南シナ海に転じて、岩礁埋め立て・人工島作戦に精を出すようになった。

つまり、何事かを他国と巧みに交渉して全体情勢を自国有利に動かした経験がない。ひたすら腕力に頼って縄張り拡大にいそしんできただけだ。人工島建設を批判した国際仲裁裁判所の判決も「紙くず」と乱暴に切って捨てるほかなかった。

米国との交渉は失敗に終わった最初の1回きりで、後は交渉らしい交渉すらしていない。粗野で荒削り、情勢に応じて柔軟機敏に対応する運動神経もない。そんな習主席が米国の要求を前に、面子を保って巧みに妥協する道を見い出せるか。私はせいぜい時間稼ぎをするのが関の山ではないか、とみる。

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