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ライフ 週刊現代

急増する「死後離婚」息子が死んだら、嫁が財産持って遁走する

舅姑の面倒なんか見たくないから籍を抜く

もともとは赤の他人。「縁を切りたい」と言われても仕方がないかもしれない。ただ、これだけは言いたい。だったら財産を置いていけ!――いまこんな問題が全国で頻発している。他人事ではない。

「もう赤の他人ですから」

「27歳で息子を出産してから30年近くにわたって夫の両親と同居してきました。当時、私が看護師として働いていたので、『仕事と育児の両立は大変でしょう。私たちが面倒を見てあげる』と言われて、その気になったのが間違いでした。その後の同居生活で積もり積もった不満は、一言では言い表せません。

昨年の春、夫が仕事中に交通事故に遭い、亡くなりました。四十九日の法要で、夫の姉妹たちに『これからも両親をよろしくね』と言われたので、『残念ながら、もう親族ではないので、それはできません』とはっきり伝えたのです」

こう語るのは、神奈川県在住の津田裕子さん(55歳、仮名)。津田さんは昨年亡くなった夫と一人息子をもうけ、夫の両親と5人家族の生活を長年送ってきた。

「同居生活がうまく回っているように思えたのも最初の2~3年でしょうか。結局は孫の世話に専念しろと言われ、無理矢理に仕事も辞めさせられました。

それからはまるで家政婦のような扱いでした。たしかに家の土地は義父のものでしたが、生活費のほとんどは私たちの財布から出ていた。子供の教育費のこともあるので、私もパートに出ることになりましたが、炊事、洗濯など家事全般はあいかわらず全部こちらに回ってくる。

舅が脳梗塞で麻痺が残ったときも、介護は私の担当。義理の姉妹たちも近所に住んでいるのに『あなたが看護師でよかったわ。プロですものね』と涼しい顔でした。

正直言って、夫が事故にあって三日三晩生死の境をさまよっているあいだ、『この人が死ねば、私は自由になれるんだ』という思いしかありませんでした」

葬儀の後、弔問に来た旧友の「もう妻じゃないんだし、嫁もやめちゃいなさい」という言葉が、夫の両親と完全に縁を切る後押しになった。

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弁護士に亡夫の親族と縁を切る方法を相談に行き、息子も説得したうえで、夫の四十九日の朝、役所に書類を提出した。

「それから集まった親族に『もう親戚ではないし、扶養の義務もなくなった』ことを告げました。予想はしていたことですが、『どういうこと?』『頭がおかしくなったの?』『お母さんを見捨てるつもり?』『身勝手すぎる』とハチの巣をつついたような騒ぎになりました。

それでも、もうこの人たちと一生関わり合いにならなくて済むと思えば、どんな言葉を浴びせられても平気でしたね。相続も済んでいましたし、保険金も入った。年金も十分もらえるので不満も不安もありません」

こうして津田さんは、義理の老父母を「見捨て」、新しい人生を歩むことになった。

 

この数年で急速に広がりつつある、新しいタイプの離婚、「死後離婚」の典型例である。

具体的には配偶者を亡くした人が、配偶者の親や兄弟姉妹と縁を切って、介護や扶養の義務を解消してしまうことをいう。その大半は夫を亡くした女性が、舅や姑らとの関係を断ち切るために行われ、逆のパターンはほぼない。

行政書士の中村麻美氏が解説する。

「わかりやすく表現するために『離婚』という言葉が用いられていますが、法的には死者とは『離婚』できません。結婚したことによって生じる義理の家族関係を姻族関係といいますが、この姻族関係を解消することを死後離婚と呼んでいるのです」