不正・事件・犯罪

闇カジノ問題で日本を去った、バドミントン・田児賢一の「いま」

マレーシアから一時帰国中に直撃

闇カジノに出入りしていることが発覚し、日本のバドミントン界を追放され、マレーシアに渡った田児賢一。今年5月には、同じく闇カジノに通い処分を受けていた桃田賢斗が日本で復帰すると言われているが、田児はいま、何をしているのか。フィリピンを中心に取材活動をするノンフィクションライター、水谷竹秀氏のレポート。

少しお腹が出ているが…

小雨が降る3月末の夕暮れ時、私は埼玉県蕨市にある高層マンションの前にいた。

入り口の自動ドアが開くたび、出てくる人々を車のバックミラー越しに目で追い掛け、ある人物が現れるのをひたすら待っていた。朝から長時間駐車しているからだろうか、近くの自転車屋の店主から時折、訝しそうに見られているのが分かった。

私が待っているその人物とは、バドミントンのロンドン五輪代表、田児賢一(27)である。蕨市に来ることになったきっかけは、マレーシアから届いた次のようなメールだった。

「ミスター田児はインドネシアのリーグ戦に参加してから気分が優れず、日本に帰国しました。それ以来、マレーシアには戻って来ていません。急用でしたら、彼に直接確認して下さい」

昨年4月7日に発覚した違法賭博行為の騒動からもうすぐ1年になる。一緒に違法カジノに出入りしていた後輩の桃田賢斗(22)とともに黒いスーツ姿で「謝罪会見」に臨み、涙を流しながら悔悟の念を語った田児の姿は、まだ記憶に新しい。

私は活動拠点にしているフィリピンでその報道を知ったが、無期限の登録抹消というバドミントン協会の処分、そしてメディアからのバッシングも含め、まだ将来がある若者を袋だたきにする日本社会の体質に、少しばかりの嫌悪感を覚えていた。

恐るべき才能の持ち主だったが…【PHOTO】gettyimages

確かに違法賭博は許されるべきではない。ましてや国から助成金をもらっている立場であればなおさらだろう。しかし、それが日本での選手生命を絶たなければならないほどの行為なのか否かは正直、疑問だった。闇カジノに通った頻度の多さや後輩たちを巻き込んだ事情があるとは言え、一方の桃田が復帰を認められたこととはあまりに対照的である。

それより以前に、読売巨人軍の所属選手たちも違法カジノへ出入りしていたことが発覚し、日本の球界を揺るがした騒ぎも重なっていたのかもしれない。結果、田児は日本でプレーできなくなり、騒動発覚から1ヵ月後にはマレーシアへ移籍し、以前から親しくしていた同国のチーム『ペタリンBC』に所属して、リーグ戦をこなしていた。 

その後、桃田についての報道は目にすることはあっても、田児には一向にスポットが当たらない。だから、彼がどうしているのかが気になっていた。異国の地でどんな思いを抱き、そしてどんな生活を送っているのかーー。

 

そう思い立ってマレーシアの所属チームに問い合わせたところ、前述のようなメールが返ってきたのだ。田児は出身地である蕨市にいるという。たまたま日本に一時帰国中だった私は、蕨に向かうことにした。

「張り込み」を続けること8時間。夕方5時ごろになってようやく、それらしき人物が現れた。

筆者撮影

短い金髪にマスク姿。バドミントン選手として全日本総合選手権6連覇を飾った栄光の時代に比べると、お腹が出て、少し太った印象を受ける。マレーシアでそれほど練習に打ち込んでいないのだろうか。私は田児本人であることを確信し、慌てて車から出て直撃を試みた。