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防衛・安全保障 日本 アメリカ
米ミサイル防衛システムの命中率は、たったの「44%」だった…
日本は自前の技術を研究するべきでは?

多くの人が懸念するように、ミサイル防衛システムの信頼性は保証されていないようだ。以下の記事によれば、2014年、当時のオバマ大統領は「これまで総額3000億ドル(30兆円以上)を費やして開発してきた迎撃ミサイルなど防空システムが、アメリカ全土を守るという本来の目的を達成できない」との結論を下したという。

●“Trump Inherits a Secret Cyberwar Against North Korean Missiles” The New York Times, MARCH 4, 2017

その裏付けとなる、アラスカとカリフォルニア両州で実施された実験では、迎撃ミサイルの成功率(命中率)は44%だった。実戦では、これよりさらに成功率は低下すると軍事専門家は見ている。

恐らく日本が採用したミサイル防衛システムも、(それが米国製であることから推察して)これとほぼ同レベルと見ていいだろう。

防衛省の中庭に配備された「PAC-3」〔PHOTO〕gettyimages

ただし厳密に考えれば、米国と日本では国土面積が全然違うし、迎撃対象となる弾道ミサイルの種類も異なるため、オバマ大統領が米国について下した結論を、そのまま日本に当てはめることはできない。

とは言え、実験環境における44%という成功率は、どう見ても安心できる値ではない。それはまた、微妙な数字でもある。つまり日本全土を完全に守るという水準には恐らく程遠いが、逆に「箸にも棒にもかからない」というものでもない。改良次第では、非常に大きな進化が期待される。

ここで以下の問い掛けをしてみたい――。

仮に日本の科学者が今後、こうしたミサイル防衛の成功率を高める研究を行うか、あるいは研究に協力した場合、それは科学者の間で、あるいは現在の日本社会でどのような評価を受けるだろうか?

 

科学者にかけられた呪縛

折しも「科学者の国会」と呼ばれる日本学術会議が先週、「安全保障技術(軍事技術)と科学者の関わり方」について新たな声明を発表した。

そこでは「(軍事目的の研究は行わない、という)従来の声明を継承する」とした一方で、軍事技術の研究を明確に禁止する文言は盛り込まれなかった。その上で日本の各大学に対し、軍事研究とみなされる可能性のある研究について、その適切性を審査する制度の創設を促している。

歴史を遡ると、日本学術会議は1967年、日本物理学会主催の半導体国際会議に米軍が資金を出していたことが問題視されたのを受け、「(日本の科学者は)軍事研究を行わない」とする声明を発表。これが、その後も引き継がれてきた。

これまで日本の科学者が軍事研究を頑なに拒んできたのは、第二次世界大戦中の科学者が軍部に協力したことへの強い反省と戒めがあるとされる。しかし近年、彼らを取り巻く状況は大きく変わろうとしている。

まず2015年に日本の防衛省が、大学など研究機関に資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」を設立。ここで防衛技術にも応用可能な民生技術、いわゆるデュアル・ユースの基礎研究を公募するとしている。

また最近、京都大学や大阪大学をはじめ日本の大学の研究者100名以上が、米空軍から研究資金を受けていたことが明らかになった。彼らの研究分野の中には、「人工知能」や「レーザー技術」など、(AIを搭載した)自律的兵器につながる可能性のあるものも含まれるという。

つまり日本の科学者は現時点で、先端的な軍事技術の研究を行う能力を備えていると見ていいだろう。

●『米空軍 大学研究者に8億円超 日本の延べ128人』 毎日新聞2017年2月8日

こうした情勢の変化を受け、日本学術会議は先週の総会で、半世紀ぶりとなる新たな声明を発表する運びとなった。そこでは(前述の通り)従来の基本スタンスは維持しつつも、「研究内容の審査」のように具体的な対応を各大学に求めるなど、かつての一枚岩が崩れる気配もある。

それは恐らく、科学者も何かが変わりつつあること、あるいは何かを変えねばならないことを感じているからだろう。

第二次大戦後の日本は経済的な繁栄を遂げた一方、安全保障条約の下で事実上、自らの命運を米国に託す形となった。しかし皮肉なことに日本に民主主義が定着するにつれて、米国側はむしろ「それでいいのか?」と問いかけているような気がしてならない。

1998年の北朝鮮によるテポドン発射実験以来、日本と米国はミサイル防衛システムの共同開発を進めている。今年2月には、その最新の成果とされる「SM-3 Block ⅡA」の発射実験がハワイ沖で実施され、(模擬)弾道ミサイルを迎撃することに成功した。

が、実際のところ日本側はこれまで、こうした共同開発にはむしろ消極的であった。理由の一つには集団的自衛権に対する憲法上の制約がある。また(冒頭で述べたように)迎撃ミサイルの有効性には疑問が残るし、中国やロシアをいたずらに刺激することも賢明とは言えない。さらに巨額の開発費用もかかるし、国民からの支持も期待できないからだ。

それでも米国側が強く働きかけてきたので、一種の政治的な配慮から日本は共同開発に合意した感がある。

結果、技術的にはセンサーやレーダー、ロケットエンジンなど、日本が得意とする一部の部品・装置類を提供するに止めた。いずれも重要なパーツだが、それらをシステムへとまとめ上げるのは米国だ。つまり共同開発とはいえ、実質的には米国がリードする米国のプロジェクトであった。

 
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