不正・事件・犯罪
籠池前理事長と150分間話した末に、見えてきたこと
「逮捕するなら、すればいい」
伊藤 博敏 プロフィール

「逮捕するならすればいい」

まず、行動ありきで、結果は後から付いてくる。その過程については、さほど興味はない。

国会喚問で、15年11月17日、昭恵夫人付きの谷査恵子氏からFAXが届き、「ご希望には沿えない」という文面ながら、結果的に籠池氏が依頼した「小学校用地の安値購入と、立て替え産業廃棄物除去費の早期返還」は見事に叶い、籠池氏は「神風が吹いた」と表現したが、それは正直な感想であり、仔細は承知していない。

同様に、近畿財務局の職員が5度にわたって大阪府を訪れ、「早く設置認可をおろしたらどうか」とせっつくなど異例の厚遇を示し、そのおかげで15年1月27日、私学審議会が「認可適当」を答申したのだが、それが誰の働きかけによるものかも承知していない。

20回近く大阪府に通い、平沼赳夫、稲田朋美、鴻池祥肇、そして安倍晋三(夫人)といった大物政治家との関係はひけらすが、圧力をかけた様子はなく、鴻池メモにあるように、ひたすらの陳情である。

 

籠池氏の長年の友人は、「ハッタリはかますけど、嘘はいわん人」と、籠池氏を評したが、私も150分に及ぶインタビューを通じて、そう感じた。そのハッタリと押し出しの良さが、大阪府や国交省の役人の忖度を生んだ。

ただ、忖度は違法ではないし、役人の性分である。従って、近畿財務局の役人に対する背任告発が受理されてはいるものの、「役所の決定事項」の責任者を突き止め、責任を問うのは、小池百合子東京都知事の豊洲移転問題がそうであるように、容易ではない。

忖度が生んだ神風に乗って、9分9厘、完成に漕ぎ着けた籠池氏は、3月10日の直前まで、「なんとかなる」と信じていた。財務省官僚の酒井弁護士を通じた「10日間、身を隠せ」という進言(酒井弁護士は3月15日に発したFAXによって否定、同時に退任)によって、2月23日以降、ホテルを転々としていたという対処法がそれを物語る。

それが完全に崩れるのは、3月9日、調査に訪れた府の職員が、「ガラケーで写真を取りまくった」という夫人の行動を理由に、わずか20分で引き上げた時である。

この役所による断絶宣言を機に、籠池氏は財務省も大阪府も弁護士も安倍夫妻も、掌返しで去っていったことを知る。だから申請を取り下げて投了したのだが、その時点で籠池氏は「恭順の意を示せば、事態は改善する」と、思っていたというのだから甘い。それは、忖度する役人を利用してきたがゆえの錯覚だった。

3月10日以降、籠池氏は坂を転げ落ちているが、後悔はしていないし、引退する気もなく、再起するつもりだ。

結局、「逮捕するならすればいい」と、言い切る籠池氏が引き起こした森友学園事件から学ぶべきは、「天皇国日本」を希求した「保守主義者・籠池氏の挫折」ではなく、その夢を無責任な忖度で叶え、露見すると逃げまくり、それどころか罪人に仕立て上げようとする安倍政権の権力の乱用と驕りだろう。