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北朝鮮とシリアの「黒い連携」をアメリカが見過ごさない理由
サリン攻撃は北の代理実験だった!?

警告は誰に向けたものだったか

今回の一連の北朝鮮を巡る緊張の発端が、4月6日夕方(アメリカ時間)、米中首脳の夕食会の最中に、アメリカ軍が行ったシリア空軍基地へのミサイル攻撃にあることは誰もが認めるところだろう。

この攻撃は、トランプ米大統領によれば、その直前、4月4日にシリア政府軍が自国内の反体制派支配地域に化学兵器「サリン」によると見られる攻撃を行い、多数の子供を含む88名の民間人が犠牲となった人道上の危機に対する警告的な行動であったという。また、米中首脳会談の主要テーマの一つ、北朝鮮の核ミサイル問題に対する牽制のメッセージであった、という解釈が報道の主流を占めている。

しかし、筆者は、これは間接的なものではなく、むしろ直接的な警告だったと強調したい。なぜなら、アサド政権のサリン攻撃については、金正恩体制の北朝鮮はいわば共犯といえる関係だからである。シリアは今回、北朝鮮の毒ガス兵器の代理実験を行ったものと考えられる。

シリアが化学兵器を使ったことだけではなく、シリアが北朝鮮由来の化学兵器を使ってみせたこと、これに関する何らかの確証を得たことが、アメリカのトランプ政権の対外政策を大きく変え、シリア空爆後、さらに北朝鮮に対し極めて強い態度を示すことにつながった。

つまり、今回の一連の緊張は、アメリカが、北朝鮮の大量殺戮兵器の開発が中東全域に拡散し、ひいては北東アジアで実戦運用の段階に突入しかねないことに敏感に反応していることによる。

そのことは日本の反応からもみて取れる。4月6日と9日に、安倍晋三首相はトランプ大統領と電話会談を行っている。この際、当然、直近のシリア問題が話題になっているはずだが、直後の13日に、安倍首相、菅義偉官房長官が、公式発言で表明したのは、北朝鮮によるサリンの大量保有と弾道ミサイルへの搭載能力への懸念が中心であった。

 

北朝鮮、シリア関与の来歴

シリアへの軍事協力国としては、旧ソ連・ロシア、イランなどが目立っているが、北朝鮮とシリアとの深い関係もまた、かなり以前から続いている。

両国の国交樹立は1966年であるが、73年の第4次中東戦争を機に軍事協力関係が深まり、北朝鮮は、戦闘機パイロット、戦車操縦兵、ミサイル要員をシリアに派遣した。さらに、90年代初頭には化学兵器をシリアに販売、90年代中盤にはサリン製造施設の設計と建設を支援した。

このようにして、シリアは化学兵器をかなり以前から保有してきたが、2013 年に化学兵器禁止条約に加盟したことで、約1300トンを申告して廃棄した。それでは、今回使用したサリンはどこにあったのか。

一つには、サリンを密かに隠し持っていた可能性が考えられる。だが、シリアの技術水準では化学兵器の長期保存が難しく、毒性効果を確実に維持するためには、新規に製造を続けて、毒ガス兵器の備蓄を更新する必要がある。

筆者が知り得た情報によると、北朝鮮がシリアの化学兵器製造設備、技術、原料などの供与に深く関与してきたことは疑いない。